RECORD

Eno.677 リュンヌの記録

月の裏側、それが悪だと、間違いだとしても(閲覧注意)

酒場で起きた、語り。

「……くだらん、俺は俺の信念を貫くだけだ。
誰でも分かるような、言わずとも分かるような事しか言えん定型分のような考えの奴とは、少なくとも俺と意見は合わんな。」

罪を背負うこの翼には…
到底、自身を愛する事なぞ、許されるものでは無いと重々承知だ。
他人の事なぞ、どうとでも言える。
それは、その者の事情を何も知らないが故に。
それはお互い様であるが故に。
この者は、他人へ口出しはしない。
否定する気も無い。
くだらない。
結局のところ、各々が自身の殻の中に居るだけだ。
それはこの者も例外では無く。

「……貴様らに、何が分かる。」

他人から見れば、単なる女好きの軟派者と思われるだろう。
だがそんな事は自分には関係無い。
勝手に囀っていればいい。
外野の言葉なぞ、わざわざ同調させる義理はない。
他人を見ているようで、真に見てはいない。
人とは、そういうものだ。
なればこそ、この者は肝心な時には口を挟まず、沈黙を貫く。

「『僕』は…大切な人が無事でさえ居てくれるのであれば、それで良い…」

例え全てを失っても。
そも、二度目の生を受けているだけで充分過ぎるほどの幸せ者であるのだから。
本来であれば、自分は存在しないはずの男だ、と。

「プレーヌ…君は…」

自身を可哀想な子、としか見ていなかった彼女を忘れる事など、出来はしない。
それがこの者の知らぬ事だとしても。


たった1人の女性を想ってしまったが故に。
自身に幸せを、自身を愛する事を望んでしまったが故に。
それ故に起きた惨劇は、忘れる事など…出来はしないのだから…


それでも…

この者は、後悔はしていない。
救いなど望んではいない。
全て覚悟の上だ、と。

それは、かつての思想か、それとも現在の思想か…



嗚呼、やはり。
1人のみを愛してしまったが故に。
それを利用されてしまったが故に。
この者は…
もう、たった1人と愛を深め合う事は出来なくなってしまった。
生物として、種の保存という名目で。
多くの女性を嫁に貰い受けなければ。
そう、言い聞かせなければ、何も救えない。
そうなってしまった。

『たった1人のみを愛する』という事が、どれほど困難な事だろうか。
そうでないのであれば……
それ故に起きた現実がそこに在るのであれば。
利用されて被害が及ぶのは。
自身がつけ込まれて不幸になるのは。
果たして、誰であろうか。

もう、結末は見えているのだから………


──────アラガエヌ、サダメガアル。