RECORD

Eno.279 ネモフィラの記録

―――地獄は綺麗だった。

かつて、地獄は無秩序だった。
いや、正確には弱肉強食が激しすぎた。
搾取強奪当たり前。弱者は奴隷としてしか生きられず、逆らわずとも遊びで命を取られる。

なによりも、それが当たり前だったと言う事。地獄はその名の通り、地獄であった。
そんな中で、一人の悪魔が宣言した。

「地獄で一番強い奴は妾が討ち取った。異論があればかかってこい。ただし、負けたらおんしらは妾の配下じゃ」



そんな傲慢な悪魔の宣言。無論、悪魔たちは激怒した。
玉座に座る悪魔に数多の地獄の住民は挑んだ。そのたびに傲慢な悪魔は勝ち続けた。
そして配下となった悪魔は、地獄へ秩序の流布を命じられた。
地獄は、地獄ではなく。弱肉強食はそのままに、秩序が作られていった。
そして地獄は、立場さえわきまえれば弱者も生きられる。そんな世界へと変わった。

――人間が攻めて来るまでは。

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「……妾はさ。人間が好きじゃ。悪魔は正直、妾の地獄に居たやつらは好かん」
「それに……此処で過ごしてきて改めて分かる。命はやっぱり、妾は好きじゃ」
「良き友もたくさんできた。推しという感情も理解できた。仲睦まじい子を見るのが好きじゃ」

「フィーに言われた言葉をよく考えておる。このままここに住んでも良いんじゃないか。」



「――そうじゃな。本当にそれも選択肢の一つとして全然良い。理想みたいな場所じゃ。」



「――ただ、唯一どうしようと考えることについては……」

「……妾は、他の奴らが思うとる以上に、寂しがり屋だってことくらいじゃな」