RECORD

Eno.599 亜久津 魔沙兎の記録

人間だった頃の記録

亜久津 将人はとある世界に産まれ、両親と弟妹と共に育っていった。

元々がヤンチャだったのもありすぐに不良の道を歩むことになるが、
あくまで仲間と喧嘩に明け暮れる程度で非行に走るほどではなく。
両親と弟、妹の前ではごくごく普通のお兄ちゃんとして生きていた。

転機が訪れたのは17歳、高校2年生の頃。
いつも通り集団の喧嘩に勤しんでいたところ、
突如隣の仲間の体が真っ青になって死んだと思ったら。
今度は向かいの相手1人が死んだ。

何が起こったのかわからないまま、次々と不良どもは死に伏し。
両チームは最後の一人を残す。
恐怖で怯える相手を一周回って冷静に殴り返した後、

「…おい、アンタは逃げろ!オマワリでも先公でもいい、この異常を伝えろ!」



そう言えば刻々と頷いた不良仲間を逃がして自分は。
この騒ぎを起こした目に痛い服を着た謎の奴等と立ち向かう…
ー間もなく、将人の体は宙に浮き、奴等の方に飛ばされる。

「これなんだっけ、キャトルシ…」



将人の意識はその瞬間に途切れ、
気が付けば知らない世界へ飛ばされていて。

ーもう、人間ではなくなっていた。将人は魔沙兎になっていた

「多分オレも死んだ扱いになってんだろーな」



「まあそれを知る手立てもねーんだけどよ」



家族にだけは申し訳ないと思う。



*****


家族は、今も「亜久津 将人」を探している。
すっかり老け込んだ両親と、大人になった弟妹は、
唯一死体がなかった、唯一生存したものを助けてくれた兄が生きてると信じて動いている。

ー最も、もう元の世界に戻ろうにも魔沙兎には手段がないが。