RECORD

Eno.81 テンタティブの記録

日記-Ⅰ:闇夜の進み方について

「……お、あったあった。
 こればかりはアイツに感謝だな」


神らが作った没武器の山。その中から一対の剣を抜き取る。
片方は血染めの紅剣、もう片方は月光の金剣。作成した軍神曰く、この双剣の銘は『玉兎』
金烏を穿てる、星を斬れる。使いこなすことが出来さえすればこの武器を使用する剣士は白兵戦において最強。
名実ともに怪物となるであろう、とはソイツ作成した軍神の言葉だ。

……とはいえ、そのように謳われた武器がここにあるということは、まぁそういうこと没になったということなのだが。
没になった理由は二つ。形状の異例からなる運用性の困難さ、そして使いこなせた際の殺傷能力の異常な高さだ。
『使いこなすことが出来さえすれば』とは即ち『使いこなすこと自体が難しい』ということ。
軍神が発する『最強』とは、まさに『最も強い』であること。それを良く学ばされた、苦い思い出付きの武器でもあった。


こういう物を見ていると、否が応でも自身の立場と在り方を再認識させられる。
大嫌いな二つ名と権能。それに伴う自身の名。頭の片隅にふわりと浮いて、黒い靄をかけていく。


「アイツだ、アイツだ。人を愛しすぎた神だ」

「創造神の初作品にして、唯一の失敗作だ。
 自身の仕事を行うたびに精神をすり減らしている神だ」

「なんて可哀そうで、なんて愚かしい。
 劣等と揶揄ることすら出来やしない。あまりにも哀れな神なのだろう」


うるさい。黙れ。オレの心を挫くな。
誰が劣等だ、誰が哀れだ。ただ人が好きなだけだ。そう在るだけだ。
オレの在り方に指をさして嘲笑するのを止めろ。腹が立つ。


「累計1927兆人。その全ての死を見届けてきた、と……。
 その、なんだ。……無理をしないようにな、[規制済]


黙れ。無理をしなければ生きていけないんだ。
この仕事をオレがしなければ、孤独に死ぬヤツが出てくる。止まってなんかいられねぇ。
オレを嗤うな、無責任な声をかけるな。こっちの気持ちなんて知らないだろうに。


「うぅんと、[規制済]? 天使達が言う事は気にしなくていいんだよ?
 私がちゃんと言っておいてあげるから、ね?」


うるさい。早くくたばれ。
お前だってどうせオレを見下しているんだろ。劣等神を生み出して楽しいのか。
過剰なまでの権能を入れて、それに苦しむ様を見て楽しんでるんだ。なぁ、そうなんだろ。
何を思ってオレをこんな仕事に就かせたんだ。クソが。ふざけるな。



「ふむ……なぁ、テンタティブ。
 君は少し働きすぎなんじゃないか? 妾、早く君と酒を呑みたいぞ!
 それに、その。君がこれを言われるのが嫌いだとは分かっているんだが……。
 ……少し、疲れすぎているような気がするんだ。どうだい、ほら。
 神界にも一応精神科とかあるじゃないか? そこを受診してみるというのは、さ……」


────あぁ、そうか。お前もか、フェリシダッド。


『世界を創りし創成の七柱。その内弐柱目に位置するモノ』

『壱柱目たる創造の神と、悲しくも対を成すモノ』

『生命・非生命問わず、その存在自体を破壊する権能を持つモノ』

『破壊、死、呪い。その全てを司るモノ』

『人の心を持ち続け、ついには心を病んだモノ』



『────創成七神、二柱目。呪詛たる死神



「黙れ。おれを見るな」


助けてくれやしないくせに。