RECORD
Eno.8 スフェーンの記録
EP7.5
◇出来事
・無理に暴かない穏やかな関係も結構。それが一番だと思うが。
が、大事な時になって知らずに見守るしかないのも辛かろう。
だから多少のひびを入れるのも俺は大事に思うがなァ。真に仲よけりゃ修復なんて簡単だろうとは夢見心地かね。
こればっかりは個人の裁量だ。
・雑貨屋のかわいい店員はありゃ何者なんだろうなァ?
要観察かもしれねェ。少なくとも人ではなさげだ。
人当たりは大変良かったがね。ありゃ店員にかなり向いてるぜ。
俺のぼやきだよ、これはな。
───────────────
※以下、特制再放送
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道を行く。道を歩く。
毅然とした路地はいつ見ても整頓されていて、迷うことのないように整備された完璧さを感じられる。
道を歩く。未知はなし。
見慣れた道を曲がっている。
少し裏側。メインストリートからの外れ。細い路地の向こう。
人の行き交いも、自動車も、浮遊車もまた見当たらないこの場所で、ポツンと1人寂しく目立つように立て看板が外に出されている。
喫茶店“エルツ” と店名、それからこの建物が何であるかを示されたそれが、人通りのないこの場所ではひたすら浮いているような気がする。
立て看板の裏側には手書きでぎっしりとメニューの品物の文字が並んでいる。
なるほど、喫茶店で食べられる定番のそれだった。
男は、それらを無視して慣れたように扉を開ける。
カランコロンとベルの音がなれば、入り口入ってすぐ目の前にはカウンター席が広がっていた。マスターはいないようだ。
伽藍の堂。
カウンターの向こうら棚のカップとコーヒー豆の置かれた棚は随分と立派だが。全く食器が減っていないのがガラス張りの開き戸からわかる。
背もたれのない革張りの丸い椅子は埃は被っていないものの相変わらずガラガラだ。
窓側に置かれたテーブル席も閑古鳥が泣いている。日焼けしたシートが、なんとも物悲しさを示していた。
それでも店内に、コーヒーの高い香りは充満していたのだが。
きゅ、きゅ、と床を鳴らす。定位置に向かっていく。なあに、いつものこと。
左から三番目の席。二番目には人がもう座っていた。
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彼女は淡い桃色の瞳を自分に向けて、その目はすぐに細くなった。
どおもぉ〜って、愛想よく柔らかく笑いながら、ひらひら手を向ける様子に、男はため息をつく。
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顎に人差し指を添えながら、どうにもゆるい表情と、甘ったるい声で、黒のセーラーの少女は男を見上げていた。
インカローズ。
彼女もまた男と同じ組織の一員である。
──ここは喫茶店“エルツ”。
彼らの組織の一員が集まる喫茶店であった。
・無理に暴かない穏やかな関係も結構。それが一番だと思うが。
が、大事な時になって知らずに見守るしかないのも辛かろう。
だから多少のひびを入れるのも俺は大事に思うがなァ。真に仲よけりゃ修復なんて簡単だろうとは夢見心地かね。
こればっかりは個人の裁量だ。
・雑貨屋のかわいい店員はありゃ何者なんだろうなァ?
要観察かもしれねェ。少なくとも人ではなさげだ。
人当たりは大変良かったがね。ありゃ店員にかなり向いてるぜ。
俺のぼやきだよ、これはな。
───────────────
※以下、特制再放送
〈これまでのあらすじ〉
ひょんなことから適性を見出された少女、ハーツは秘密結社ヴィヴィアンに加入することとなる。
秘密結社ヴィヴィアンの仕事は、悪の組織エルミナージュの本拠地を探し出し、壊滅させること。
彼らはそれぞれがpsiと呼ばれる位能力をもち、街や人を常に危機に晒しあげている。
彼らを打ち倒す決意をしたハーツ。しかし、その矢先──
道を行く。道を歩く。
毅然とした路地はいつ見ても整頓されていて、迷うことのないように整備された完璧さを感じられる。
道を歩く。未知はなし。
見慣れた道を曲がっている。
少し裏側。メインストリートからの外れ。細い路地の向こう。
人の行き交いも、自動車も、浮遊車もまた見当たらないこの場所で、ポツンと1人寂しく目立つように立て看板が外に出されている。
喫茶店“エルツ” と店名、それからこの建物が何であるかを示されたそれが、人通りのないこの場所ではひたすら浮いているような気がする。
立て看板の裏側には手書きでぎっしりとメニューの品物の文字が並んでいる。
なるほど、喫茶店で食べられる定番のそれだった。
男は、それらを無視して慣れたように扉を開ける。
カランコロンとベルの音がなれば、入り口入ってすぐ目の前にはカウンター席が広がっていた。マスターはいないようだ。
伽藍の堂。
カウンターの向こうら棚のカップとコーヒー豆の置かれた棚は随分と立派だが。全く食器が減っていないのがガラス張りの開き戸からわかる。
背もたれのない革張りの丸い椅子は埃は被っていないものの相変わらずガラガラだ。
窓側に置かれたテーブル席も閑古鳥が泣いている。日焼けしたシートが、なんとも物悲しさを示していた。
それでも店内に、コーヒーの高い香りは充満していたのだが。
きゅ、きゅ、と床を鳴らす。定位置に向かっていく。なあに、いつものこと。
左から三番目の席。二番目には人がもう座っていた。
「………」
彼女は淡い桃色の瞳を自分に向けて、その目はすぐに細くなった。
どおもぉ〜って、愛想よく柔らかく笑いながら、ひらひら手を向ける様子に、男はため息をつく。
「インカローズだけか」

「……私しかいないよぉ?」
顎に人差し指を添えながら、どうにもゆるい表情と、甘ったるい声で、黒のセーラーの少女は男を見上げていた。
インカローズ。
彼女もまた男と同じ組織の一員である。
──ここは喫茶店“エルツ”。
彼らの組織の一員が集まる喫茶店であった。