RECORD

Eno.272 『残響』の記録

甘くて、あまい。ガトーショコラ

生後約一ヶ月、生物未満、概念以上
奇跡のように発生して、夢のような想いを抱えて、苦い未練を道しるべにして

ずっとずっと、会いたくて
ずっとずっと、望んでいて

近くの話になれば、すぐに花咲くように口ついてしまって
知らない者、関係の無い者からしたら、つまらないのは、分かっているのに

新しい所に居ても、心はずっと飴で出来た舞台に取り残されて
ずっと、ずっと、また幕が開かないかと、一人、舞台袖で、夢見るように待っていて

分かってる
生まれたての万能感が、抱く未練と嫉妬、そして劣等感を辛うじて押し潰してるだけだって

何より醜くて、本体すら妬もうとして、原典すらも侮辱するような、ただ響くだけ、過去の遺物で、泥人間スワンプマンな自分であることを

「あ……鳥類?」



居た、居た……居た!

覚えてる知っている覚えてる記憶している覚えてる刻まれている

小さな仲間!あの島の命名者!夢見た一人!
浮かれて、浮かれかけて、思考は冷静に情報を吐き出す

その鳥は他人の空似があると
そもそも、座標が近いとはいえこんな荒くれた場所に無人島にナガサレただけの彼らが居るはずがないと
そして……元から、願いなんて、空想でしか叶うはずがないと

正解だった

そりゃあ、そうだ。自分だって突き詰めればそうなのだから。同じような姿の誰かなんて、この世界には有り触れている。そうやって物語として多方面から味わい尽くされるのだから

落胆して、落胆した自分に失望して、それが表に出そうになった自分を殺して

オキャクサマとして正しく迎える
役割は遵守したいから。型が無いと落ち着かないから。そうしている間は、考えなくていいから

かと思えば出てくる手がかり

……そんな、さ。都合のいいお話、あっていいの?良い子にしてないのにプレゼントが来てしまった気分だ

伝わるかも知れない。忘れられているかも知れない。本当は繋がってなんていないのかも知れない。間違いかもしれない。駄目かもしれない

それでも、それでも。あの夢はただ消える夢じゃないと思えたのが嬉しくて。自分事のように嬉しくて

レウム『いつか生まれる物語』が、元気にしていたよって、伝えて」



この想いが、伝わりますよう
忘れられて、居ませんように
ずっと、一緒に……居るから

未だ貌知らぬ物語『いつか生まれる物語』の代わりに
既に焼尽きた概念レウムの代わりに

今も響き渡る物語『残響』が、伝えさせて

甘くて甘い。ショコラのケーキ
苦い苦さは、お前の契機

フレンチトーストのように甘いだけじゃなく
コーヒーみたいに苦いだけじゃなく

甘くて苦い、ショコラのケーキ
苦さだって甘さになるし
甘さだって苦さになる

半端で未熟で熟成不足?
それでも美味しい、ショコラケーキ

過去と未来の二人に負けない
現在生きる。彼方に響け、この『残響』