RECORD

Eno.276 リベレの記録

点検:十文字槍



異世界というものが存在し、
自分もそのひとつからここへ迷い込んできたと
納得してから、結構経つ。

僕はこっちでいう、和世界の出身……
ということでいいのだろうか。
文化はバーチャルの中にしか残っていないし、
歴史もデジタルの教科書の中にしかないけれど。

お米や和食を美味しいとは思うけど、
それだってこの世界に来てからのことだ。

基本食事は栄養の管理されたレーションにVR味覚をつけていただけで、
たまに母が作る「料理」は……
…… 食材そのものも手に入りにくいし、その、文句は言わない。
思い出深い味ではあった。ただ、何かのジャンルには分類しちゃいけない。

脱線した。僕の中に和の心が生きているかと言われると、微妙だ。
だからか、十文字槍みたいな武器を持つ時も、
洋装で外してもいいんじゃない? みたいな気持ちがある。

僕の中でのこの武器は、
苦境も押し通れるかっこいい主人公みたいな存在だ。
だから、黒い刃をあの蜻蛉の翅に見立てて、
それに似合う黒い装いを仕立ててもらった。

店長が「リベレって……やっぱり14歳くらいだったりする?」って
嫌味をきかせてくるけど、聞こえないふりだ。