RECORD
Eno.34 シャルティオの記録
【0-15 導きのフォルーシア】
──視点:フォルーシア
◇
覇王ニコラスの元には、優れた勇将智将が集まる。
呪炎の宰相クレイリオ・ファルティエ、
砂漠の傭兵長デュアラン・ディクストリ、
治癒の死霊術師ベアトリーチェ・ニーナクィン、
双子の魔道具師アウリス・アルビオン&エウリス・アルビオン
などが主な将として挙げられる。
ニコラスの王子たちも皆、優秀だ。
魔導王国は確かに強大だけれど。
セラン王国との同盟があってさえも、
戦況は押されつつあるのが現状であった。
「武に優れるデュアランと、
他のメンバーが組むとそれだけでかなりの脅威になる……。
しかも彼の率いる傭兵団、
奇抜な動きばかりするから読めないのよねぇ……」
フォルーシア・アンディルーヴは優秀な指揮官でもある。
彼女は親としては良くない人間かも知れないけれど、
魔導王国の民からすれば完璧な女王様。
能力がない訳では、ないのだ。
魔導王国へ宣戦布告が為されてから、約2ヶ月後の話である。
女王は王宮で、次に打つべき手を悩んでいた。
そこへ。
「伝令! ラファスの街が落ちました!」
「伝令! 河南地域が落ちました!」
ふたつの伝令。
女王は表情を変える。
「河南……地域…………」
国境沿いのラファスの街はまだ損失としては大きくない。
問題はその次、河南地域。
河南地域と呼ばれるそこには、
かつて魂国と呼ばれる国があった。
そこを魔導王国が侵略して得た新たな領土だ。
河南地域にはその戦の時に出た死者たちの魂が、
今も冥界に帰れず彷徨っているという。
そして帝国には死霊術師がいる。
もしもこの魂たちが、
彼らによって悪用されるようなことがあったら?
女王は考える。
打つべき手は、打つべき手は。
「……河の分岐点、フィリスの街に将を集めなさい。
私も直接向かうわ。フィリスの街を決戦場とします」
女王の光魔法は強大だ。
そして民から慕われる女王が直接赴けば、
現場の士気も確実に上がるだろう。
いつかは自分も戦場へ出る必要があると分かっていた。
戦えない女王ではない、必要とあらば何処へだって。
「けれど万が一を考えて、フォーリンは城に残すわ。
もしも上手く行かず私が死ぬことがあっても、
この国を存続出来るように!」
さて、と女王は玉座を立つ。
「この件、フィリスの街にも伝えなさい。
私は王宮を留守にするから……
ギャレット、いるかしら?」
「……はい、此処に」
女王の声に応えるは、
灰色の髪に青の瞳を持った、初老の男性。
たくさんいる王宮魔導士たちを纏める王宮魔導士長、
ギャレット・サヴィアだ。
「フォーリンとこの城のこと、任せたわ。
上手くやって頂戴ね」
「は、私にお任せ下さいませ」
女王はこの王宮魔導士長を信頼している。
女王は己の長男のことも信頼している。
女王は己の戦略のことも信頼している。
きっと全て上手くいく、はずなんだ。
完璧なるこの女王が、間違えるなんて有り得ない。
──しかし女王はそれ故に、
見落としているものがあった。
フィリスの街を決戦場とする宣言から2日後、
女王は将たちを連れて城を出た。
誰もが、彼女こそがこの戦争を終わらせて、
彼女が城に戻る時は凱歌が響き渡ると信じていたんだ。
そうして北大陸に再び平穏が訪れることを。
信じて、いたんだ。
【0-15 導きのフォルーシア】
【0-15 導きのフォルーシア】
──視点:フォルーシア
◇
覇王ニコラスの元には、優れた勇将智将が集まる。
呪炎の宰相クレイリオ・ファルティエ、
砂漠の傭兵長デュアラン・ディクストリ、
治癒の死霊術師ベアトリーチェ・ニーナクィン、
双子の魔道具師アウリス・アルビオン&エウリス・アルビオン
などが主な将として挙げられる。
ニコラスの王子たちも皆、優秀だ。
魔導王国は確かに強大だけれど。
セラン王国との同盟があってさえも、
戦況は押されつつあるのが現状であった。
「武に優れるデュアランと、
他のメンバーが組むとそれだけでかなりの脅威になる……。
しかも彼の率いる傭兵団、
奇抜な動きばかりするから読めないのよねぇ……」
フォルーシア・アンディルーヴは優秀な指揮官でもある。
彼女は親としては良くない人間かも知れないけれど、
魔導王国の民からすれば完璧な女王様。
能力がない訳では、ないのだ。
魔導王国へ宣戦布告が為されてから、約2ヶ月後の話である。
女王は王宮で、次に打つべき手を悩んでいた。
そこへ。
「伝令! ラファスの街が落ちました!」
「伝令! 河南地域が落ちました!」
ふたつの伝令。
女王は表情を変える。
「河南……地域…………」
国境沿いのラファスの街はまだ損失としては大きくない。
問題はその次、河南地域。
河南地域と呼ばれるそこには、
かつて魂国と呼ばれる国があった。
そこを魔導王国が侵略して得た新たな領土だ。
河南地域にはその戦の時に出た死者たちの魂が、
今も冥界に帰れず彷徨っているという。
そして帝国には死霊術師がいる。
もしもこの魂たちが、
彼らによって悪用されるようなことがあったら?
女王は考える。
打つべき手は、打つべき手は。
「……河の分岐点、フィリスの街に将を集めなさい。
私も直接向かうわ。フィリスの街を決戦場とします」
女王の光魔法は強大だ。
そして民から慕われる女王が直接赴けば、
現場の士気も確実に上がるだろう。
いつかは自分も戦場へ出る必要があると分かっていた。
戦えない女王ではない、必要とあらば何処へだって。
「けれど万が一を考えて、フォーリンは城に残すわ。
もしも上手く行かず私が死ぬことがあっても、
この国を存続出来るように!」
さて、と女王は玉座を立つ。
「この件、フィリスの街にも伝えなさい。
私は王宮を留守にするから……
ギャレット、いるかしら?」
「……はい、此処に」
女王の声に応えるは、
灰色の髪に青の瞳を持った、初老の男性。
たくさんいる王宮魔導士たちを纏める王宮魔導士長、
ギャレット・サヴィアだ。
「フォーリンとこの城のこと、任せたわ。
上手くやって頂戴ね」
「は、私にお任せ下さいませ」
女王はこの王宮魔導士長を信頼している。
女王は己の長男のことも信頼している。
女王は己の戦略のことも信頼している。
きっと全て上手くいく、はずなんだ。
完璧なるこの女王が、間違えるなんて有り得ない。
──しかし女王はそれ故に、
見落としているものがあった。
フィリスの街を決戦場とする宣言から2日後、
女王は将たちを連れて城を出た。
誰もが、彼女こそがこの戦争を終わらせて、
彼女が城に戻る時は凱歌が響き渡ると信じていたんだ。
そうして北大陸に再び平穏が訪れることを。
信じて、いたんだ。