RECORD
Eno.294 男子高校生らしいなにかの記録
衝動
われながらテルルの、妹のこととなると抑えがきかなくていけない。
せっかくあいつがともだちと楽しくやってたのに、空気をわるくしちまった。
ロブさんだったか、寛大なひとで助かった。こんどちゃんとおわびをしよう。
テルルのことは心配だけれど、あいつにはあいつの交友関係ってもんがある。
オレがいつもいつまでも世話を焼いてやれるわけじゃないし、
しっかりものでいじっぱりなとこがあるあいつはそういうのをいやがるだろう。
むやみにオレが首を突っ込んじゃあいけない、そうわかってはいるんだが。
わかっているなら抑えないと。
用事がなければカフェには近づかない方がいいのかもしれない。
でも、離れてたら離れてたでそのぶん気になったりするからなあ。
なんにせよ、自重しないとだ。
それにしても。
ごく自然に、身体が動いた。
なんのためらいもなく、『そういう判断』ができた。
『そういう判断』をしたという自覚すらなかった。
オレはそういう目的のために闘技大会に参加したけど、
どうやら効果があった……んだろうか?
違う気がする。
たぶんこれは、もともとオレの中にあったものだ。
『妹のため』、それがキーなのか?
オレは『妹のため』ならためらいなく自分を捨てることができた。
それは覚えている。
だけど、ためらいなく捨てられたのはオレ自身だけじゃなかったのか?
施設、という言葉が妙に耳に残っている。
そうだ、オレと妹とあいつは、施設で暮らしてた。
そこからオレと妹は逃げ出した。
あいつは、それを追ってきた。追ってきてくれた。
あそこはどういう施設だったろうか。思い出せない。
妹はどういう子だったろうか。
黒い髪の/透き通るような髪の/長い髪の/ショートカットの/背の高めな/小柄な/元気な/病気がちな/おしとやかな/小悪魔な/頭のいい/身体を動かすのが好きな/家事上手な/だらしない発育のいい//つつましやかな/子だったことは覚えてるんだが。
そもそも妹の名前はなんだった?ひとりだったか?複数いた気もする。思い出せない。
ただひとつわかってるのは、そうだ。
オレは妹を守り抜くモノだった。そのためのモノだった。
なにから?なにからそんなに守る必要があったんだ?
そりゃわるい大人はたくさんいるだろうけど、
そのために自分自身を捨てなきゃいけないようなことってそうなくないか?
オレがいた場所はそんなに治安が悪かったか?
オレはどこに住んでた?親はいなかったのか?
学校は?同級生は??思い出せない。
思い出せない、のか。
最初からオレにはそんな記憶なんてないのか。
酒場でスワンプマン、という言葉を聞いた。
黒い泥。ごく一部しか再現できてない、襲い掛かってくるだけの存在。
残響。影法師。できそこないのニセモノ。
やめよう。
いまのオレはシンイリだ。
オレがいまのオレになってから手に入れられた、
ルファさんやテルルやみんながそう呼んでくれる名前。
それは前のオレが持っていなかった大切なものだ。
オレはオレとしていま生きてて、大切な人たちがいる。
それでよしとしておこう。
だけど、テルルを、だれかを『妹』と考えるのは。
オレの衝動のキーにしてしまいかねないのは。
やめておいた方がいいのかもしれない。
家族。そうだな、家族だ。
それなら少し距離が置けるかもしれない。
そう考えるようにしてみよう。
ルファさん。きみに会いたいよ。
せっかくあいつがともだちと楽しくやってたのに、空気をわるくしちまった。
ロブさんだったか、寛大なひとで助かった。こんどちゃんとおわびをしよう。
テルルのことは心配だけれど、あいつにはあいつの交友関係ってもんがある。
オレがいつもいつまでも世話を焼いてやれるわけじゃないし、
しっかりものでいじっぱりなとこがあるあいつはそういうのをいやがるだろう。
むやみにオレが首を突っ込んじゃあいけない、そうわかってはいるんだが。
わかっているなら抑えないと。
用事がなければカフェには近づかない方がいいのかもしれない。
でも、離れてたら離れてたでそのぶん気になったりするからなあ。
なんにせよ、自重しないとだ。
それにしても。
ごく自然に、身体が動いた。
なんのためらいもなく、『そういう判断』ができた。
『そういう判断』をしたという自覚すらなかった。
オレはそういう目的のために闘技大会に参加したけど、
どうやら効果があった……んだろうか?
違う気がする。
たぶんこれは、もともとオレの中にあったものだ。
『妹のため』、それがキーなのか?
オレは『妹のため』ならためらいなく自分を捨てることができた。
それは覚えている。
だけど、ためらいなく捨てられたのはオレ自身だけじゃなかったのか?
施設、という言葉が妙に耳に残っている。
そうだ、オレと妹とあいつは、施設で暮らしてた。
そこからオレと妹は逃げ出した。
あいつは、それを追ってきた。追ってきてくれた。
あそこはどういう施設だったろうか。思い出せない。
妹はどういう子だったろうか。
黒い髪の/透き通るような髪の/長い髪の/ショートカットの/背の高めな/小柄な/元気な/病気がちな/おしとやかな/小悪魔な/頭のいい/身体を動かすのが好きな/家事上手な/だらしない発育のいい//つつましやかな/子だったことは覚えてるんだが。
そもそも妹の名前はなんだった?ひとりだったか?複数いた気もする。思い出せない。
ただひとつわかってるのは、そうだ。
オレは妹を守り抜くモノだった。そのためのモノだった。
なにから?なにからそんなに守る必要があったんだ?
そりゃわるい大人はたくさんいるだろうけど、
そのために自分自身を捨てなきゃいけないようなことってそうなくないか?
オレがいた場所はそんなに治安が悪かったか?
オレはどこに住んでた?親はいなかったのか?
学校は?同級生は??思い出せない。
思い出せない、のか。
最初からオレにはそんな記憶なんてないのか。
酒場でスワンプマン、という言葉を聞いた。
黒い泥。ごく一部しか再現できてない、襲い掛かってくるだけの存在。
残響。影法師。できそこないのニセモノ。
やめよう。
いまのオレはシンイリだ。
オレがいまのオレになってから手に入れられた、
ルファさんやテルルやみんながそう呼んでくれる名前。
それは前のオレが持っていなかった大切なものだ。
オレはオレとしていま生きてて、大切な人たちがいる。
それでよしとしておこう。
だけど、テルルを、だれかを『妹』と考えるのは。
オレの衝動のキーにしてしまいかねないのは。
やめておいた方がいいのかもしれない。
家族。そうだな、家族だ。
それなら少し距離が置けるかもしれない。
そう考えるようにしてみよう。
ルファさん。きみに会いたいよ。