RECORD

Eno.272 『残響』の記録

最海は思ったより近くて

毎度恒例清掃を終えて、一息ついていると、手紙が届いた。

提供される宿舎を使おうとは思わない。
だって、眠るなんて死んでいるようで気持ちが悪くて(本当に死ぬ方が余程気が楽!)
どうせ暇なら何かをし続けていたい。声を発したり動いたり、誰かに認識されていないと。抱えてるもの全てが溢れて零れて、この想いまで全部夜闇の虚無に呑まれてしまいそうで。

だから、俺の場所はこのカフェテラスと伝えてある。
ここである必要は無い。ただ、慣れているのと、『甘い』や『苦い』は俺と記憶を繋ぐ命綱になって、そしてここはそれが多い場所だから……くらい。

手紙も書かれるモノ。小さく、聲が

「聞こえなぁい!!!」

こう、衝動的に、その辺にあったタオルで、伏せた。

眠ってて欲しい。向き合えるまで。ちょっと何年かかるかわかんないけど
……ダメすか?
……だめ、かなぁ?
……うん……

タオルを、退ける。

……

気付けば、内容を語る手紙を、抱き締めていて
気付けば、その現実聞こえてくる内容に相槌しか返せないで

気付かない内に、相槌すら震えてて

なんで震えてんだろ
なんでこんなにおかしくなってるんだろ
ぶっちゃけそれこそアイドルの営業用メールみたいなモンに決まってるじゃん、こんな不審者相手だし

なんだか冷静にすらなってるのに、震え、とまんない。
なんか、雨漏りまでしてきてるし。なんで顔だけ濡れるんだよ。雨水は全身で浴びていいんだよ
ンだよ。折角レウム彼女は覚えて貰ってて、何故か『残響』まで認めてもらってしまったのに

こんなに、こんなに身に余るんだから
溢れないでよ
零れないでよ
溺れてしまうから

こんな都合の良い現実、夢に決まってるのに
この優しさは全て、『残響』に与えられるべきものでは無いのに

だから、そんなに優しさを降らせないで
その優しさで出来た湖を最海最果てと思ってしまう
全てを甘受していいと驕ってしまう

この湖に、沈んで溶けて、偽物オデットであると、見せしめたいのに

あぁ……雨よ、雨よ。止まないで
優しく雪いで、いつか、いつの日にか

我儘すらも、赦して