RECORD

Eno.345 エイサの記録

無題

…………――――。



「……ああうん、話の途中だったね。
 ごめんごめん、少しぼんやりしていてさ?」


「そして、彼らは戦場で囁かれる様々な流言蜚語を知り、こう考えたんだ」





       ・・
『だが、或いはそれも、有り得ないとは言い切れないのではないか?』 と。



そんな些細な思いつきに執心する狂気が彼等にはあった。
その果てに彼等は見つけ出したのが『異能力者』と呼ばれる存在だった。

そうして彼らは、調べ尽くした。
考え得る総ての方法を使って。持ちえた総ての技術を用いて。
集めた能力の全てを可能な限り合一させては実験を試みた。
まるで玩具のように。失敗したら廃棄し、存分に。

そうやって与えられた技術と能力を完全に発揮するための訓練と、
兵器軍用犬』として戦場で運用するための知識や経験を叩き込まれて完成したのが。



「僕みたいな強化人種後天的異能力者ってわけだよ」



…………。


「――……嗚呼、けれど、それも噂だ」





     ・・・・・・・・・・・
正しくは、噂でないといけなかった。 
公式に認められてはいけない。精々が戦場の噂。そこにしか存在してはならない。

何故か? ――当然だ。
身寄りのないもの、奴隷だったもの、
貧しさ故に家族への仕送りを条件に志願したもの。
その逆に家族から金銭目的のために売られたもの。
境遇も理由も様々とはいえ、それら成人もしていない子どもを集めては彼らを《怪物》に変えた。
そんな非人道的なことが存在したなんて知られたら?
間違いなく非難され、その国は世界から爪弾きになる。



だから、そんな存在はただの噂話。

だから、







彼らには戦死して貰わなければ。用済みの怪物は廃棄しなければ。













…………。


「……生き残っちゃったんだけどねぇ、これが」


「ま、今が面白いからもうどうでもいいんだけど」




復讐も。野望も。《あの街》の彼らによってお釈迦になってしまった。
今の自分は改造人間の一七号ではなく。復讐の亡霊の戦争屋エイサでもなく。ただの旅人ナナだ。



それでも一度外れた発条、緩んだ螺子は元に戻せない。


噛み合わない歯車のまま壊れた玩具怪物は、もう直ることもない人間には戻らない



「……って。あれ。寝ちゃった?」



「ふふ、いいよ。二人とも与太話に付き合ってくれてありがとう」







「おやすみ」