RECORD

Eno.72 Rere Pia Goetheの記録

(0)記録 教典の器の廃棄について

教典[β]より――

■選抜器の都


教典[β]の後期に存在した、教典の容れ物となるエルフを収容した施設。教典[β]の容れ物になれる条件は『エルフ族の末裔である事』であり、該当する子を産むエルフには任意でこの施設に預けるよう、教会からの御触れが出ていた。(もっとも任意と言うには甚だ強引なものであったが)

教典《γ》の時代に入る直前には、その施設の異常さを疑問視する声も多く、その後の調査で拷問や迫害紛いの行為が露呈した。

最終的に被害にあったエルフ族末裔の人数は88人とされており、一部は協力者の計らいで途中World GATE――所謂〝ランダム異世界転生装置〟――等で逃げ出した痕跡もある。ただし当時のWorld GATEの完成度を考えれば、生存確率は絶望的。

唯一、その確率すら乗り越えて生存したとされるのは一名。異世界に生きる50歳の本人から届いた手紙が、その母親のいた独房から見つかった記録がある。当時の資料も母親自体も、教典[β]最期の大災害により水底に沈んでしまったが、この証拠がWorld GATE開発の糧となった一面もある。

尚その後の行方は不明とされている。
……。


 捜索もされていない。なぜなら、





■教典の容れ物


使われても使われなくても、その目には変質が起こり嫌でも〝未来視〟が可能になる。
教典{α}の容れ物ならば、情報量は控え目なので人間の精神的にはそこまで問題ではない。
教典[β]はまともな生活を送れない程度には、見る未来の情報量が多い。頑張れば意識は保てる。

教典《γ》、教典【Δ】の容れ物については論外。とてもじゃないが人間が耐えられるものではないため、何らかの手段で強引に生かされでもしない限り精神は死ぬ。



教典[β]では、選抜器の都において沢山の教典の容れ物が存在しており、その中には容れ物として不必要となったエルフもいた。それらは全員安楽死させられている。生かしても邪魔にしかならない、というのが大体の理由だろうが、関係者は口を揃えて本人達の為でもあると供述する。



「…………」





「――ええ。本人達の為です。……ああ、知らないのですか? 選抜器の都は元々、未来視の副作用に苦しむエルフ達の集う〝終末施設〟でした。彼や彼女達は、……目が変質した辺りから、早く器として使ってくれ、そうでないなら殺してくれとせがむんです」









「生きている方が、辛いんでしょうね」







「この狂った施設に変わって行ったのも、合致してはいけない〝需要と供給〟がそこにあったからでしょう」





ふふ、ふ、ああ、私もそうですよ。そういう〝哀れな子〟が……せがんだのを後悔しながら冷たくなる姿に興奮するんです






記録を終了します。創造神、続けてよき旅を。――後悔なき選択を。