RECORD

Eno.8 スフェーンの記録

EP11.5

◇出来事

よっしゃ(ガッツポ)



なんとなく寄った海辺で修羅場見たけどなんかいい感じになってるのをみて嬉しいかぎりってわけだった。
俺は部外者の通りすがりなのに見てたから、鞭は当然お受けしたわけだった。
あの眩しい子供が曇るなら、仲良い大人が助けるだろうとは思っていたが、ほんと、きちんと足を踏み入れたようでよかった。
言の葉を交わすのが一番だろう。
起こった出来事は想定外だろうが、上辺を撫でるよりは多少の衝撃で目を覚ました方がいい。
よっぽど健全な関係に成ったんじゃなかろうか。
部屋で寝る関係が健全かはわかんねえけど…………何もしないなら健全だろ………


「演じ続けるって擦れること 素を完全に曝け出せる人がいるのはいいこと」



「それでさらにあの子の演技が良くなるといい」





──心の重荷が減るって必要ことだからさ。



「……」





あと俺はほんとに何にもねえって




ないやい!



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※以下、再放送




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──中央都市セレシオン。


ハーツ・グランは昼下がりの午後、ふとひょんなことから悪の組織エルミナージュの一員、インカローズと相対する。

───そこまでに何があったというのか?

ハーツは学校からの帰路の道中、ふ、と閃いたように道筋に道草を加えた。
最近動画で特集されたメロンパン!
それは偶然にも彼女の住む近辺のパン屋で販売されているという。そうとなれば行くしかない。
第一線で戦う彼女だって、ただの女子学生には違いないのだ。
足取り軽く、放課後の道を歩く。いいや歩いてなんていられない。
全力ダッシュ!だって特集されてるんだもの、みんな正しさと美味しさを求めて買いに走るに違いないんだ。
ハーツは地面を蹴り、律された通路を走っていく。
そうして店の長い行列の一番後ろにつけた。
どきどき。
わくわく。
味わいを頭にほわほわ浮かべて、高まる期待に目を光らせて──

──自分の前で売り切れ!

それはもうがっくりと凹んでいる。

そんな矢先のことである。
負け戦の解散。
なんと店内から出てきたのは彼女──インカローズ!
彼女は紙袋を片手に、そこから取り出されたであろう齧りかけのメロンパンを片手に、金糸の髪と緑のリボンを揺らし、店内から出てきた。
その淡い桃の色の瞳と視線がぶつかり、互いに固まってしまった。
ハーツは当然焦った。彼女はその時はただの制服姿であり、しかし彼女の服装は変わりがない。
それでも負けない、とファイティングポーズを取れば。

彼女はなんと吹き出して笑い出したのだった。


「ここ、街中だよお?そんなに焦ったって何にもしないってえ」



「私だってわきまえがあるんだからねえ」



変わらずなのはほんとした声に呆気に取られていたところ、さらに呆気に取られる行為を彼女は取った。
これ、あげるよお、と、なんと!売り切れていたメロンパンを彼女に差し渡したわけである。

一体どういう風の吹き回しか。
ハーツが訝しむように問い掛ければ、わはー、とインカローズは口元で手を広げた。


「気まぐれだよお。…それとも対価がのぞみならぁ…」




「──私とデートしてよ、ハーツ・グラン」




彼女の桃色が細くなった。


【nx話前半より抜粋】