RECORD

Eno.480 タラッタムー・スラットゥスの記録

ネズミはパセリの夢を見る

 武器の整備をしていた時、ガレス(国民の名前だよ)から

「おうさま、最近ずっと楽しそうだね!」


 と言われて、そうだねと返した気がする。振り返れば最近はずっと楽しい。
国民たちも、ずいぶんとここを気に入ったようで最近は自分がいなくとも自主的に外へ出て行っている。僕はとても安心した。
ここに来たのは同僚のミーナからの推薦があったとはいえ自分の目的が占めていたから。彼らを付き合わせてしまっていないか、時たま不安になってしまう。
彼、彼女らは僕にたいして 優しすぎるから/恩義を感じてしまっているから きっと、一歩引いてしまうのだ。
皆は皆自身の夢とか気持ちをキチンと見つけて大切にしてほしい。水族館に後を任せているとはいえ――たくさんの未来があるのだから。
 

 ぼんやりと武器を研ぎながら、数日間の戦いを思う。相手を観察し、全てを考察し、己の全てを賭け、技を研ぎ澄まして戦う。
ずっとずっと、欲しかった感覚がここには沢山有って。僕は時たま泣きそうになってしまう。
 ここは僕をちゃんと“闘技者”としてみてくれる方が多い。ただのネズミには奇跡のようだと思う。
だって、昔は戦いにすらならかなかった。僕が出来たのは、駆除への抵抗、あるいは――たった一度、悪人を処罰したくらいだ。
 人と元の姿のままで握手ができる幸運を、全てを賭けて相対できる幸運を、――僕は一生忘れないだろう。 

 
だからこそ、

「もうちょっともうちょっと早く、ここに来るチャンスがあれば」


「あるいは長く生きれたら――と思うのは」


「ネズミ的な生存本能なのかな」


「それともネズミらしかぬ未練というべきなのかなあ……」



 師匠から聞いた、ネズミの寿命の話。人よりもずっと少ない砂時計。
魔法を覚えるのに、国民を助けるのに、戦うために、随分と砂を減らした。
たぶん、もうちょっとしか残っていないなんだろう。
昔は気にしていなかったけど、――こういう時に嫌になるんだなって痛感した。
それでも、命の流れというものはどうしようもないのだから。
それでも、まだ幸せな下水道に帰る気などさらさらないのだから。
割り切って楽しむ・・・しかないよね。

 フィールリーンさんとの楽しかった戦いを思い出す。彼女からそっと打ち明けてもらった、何者でもない彼女は。何者になれるのか、何かになることが出来るのか――という問い。
彼女の戦いは素晴らしかった、だから絶対大丈夫。積み重ねが出来るのならばいつか絶対己の形をそこから見いだして、大きな世界に足跡を残せると思うんだ。 
 リベレさんとの戦い、どんどん成長を重ねていく彼をみているのはとても楽しい。真っすぐな彼を見ていると自分ももっと強くなれそうな気がする。変幻自在に様々な武器を重ねていく彼は夢をかなえられると思うんだ。
 そうやって、戦ってきたいろんな人を思い出す。きっと刃に何かを載せて皆が皆戦っているんだ。それらがすべて叶っていくような、確かな強さを僕は信じている。

 それが僕が見ることは――きっとないのだけど、そうなってほしいなって思う。ネズミに神様はいないから、星にお願いをしておくことにしよう。

 戦ってくれた全ての人にいいことがありますように。