RECORD

Eno.104 ネージュ・コルウスの記録

クオリアの在処

最近、スワンプマンと呼ばれる魔物がアレーナに現れているという報告がある。
特徴は泥状の身体を持ち他の生命体の姿を模倣するというものだ。
アレーナでは闘技者の姿や行動原理を模倣し、周囲に混乱を呼んでいるのだという。

ボクは気になってしょうがなくなったので、
最近は人通りの少ない場所を中心に見張りをしている。
一般人や、まだ未熟なボクの弟子に何かあったら正直困るからだ。

けれどひとつ、頭に引っかかることがある。
今のボクの肉体は『白い泥』の器に電子宇宙アストラからダウンロードした魂を入れることで、
現実世界で稼働する、一種のアンドロイドのようなものだ。

ボクは今、こうして現実で生きてはいるけれど。
もしかして、自分を"人間"だと思い込んでるスワンプマンなんじゃ――

ダメだ、考えるな。最も自分を信じて愛せる存在は自分自身しかいないのに、
自分を信じられなくなったら、それこそおしまいではないか?

ボクはからす座の星騎士、ネージュ・コルウス。
清く正しいかは置いておいて、守るべきモノを守るのが仕事なんだ。

さあ、仕事を続けようか――

「!?」


もう鳴らなくなったはずの心臓が、ドキリとなる感覚。
昔のボクであれば、夢のまた夢だった出来事。
至上である自分自身の美貌に、無条件で喜んでいたかもしれない。

けれど今ここで出会ってしまったのは、異常事態に他ならない。
あれも噂の"スワンプマン"であれば、直ちに狩らねば確実に危険だ!

判断は一瞬。
空で円舞を舞いながら、もうひとりの自分に斬りかかる。

泥人形は星剣の一閃で、掻き消えるように消えた。
斬った手応えは、ほとんどなかった。



静まり返った路地には、ボクがただひとり立っていた。

「終わった……のか?」


もしこれで終わりではないのなら。
『ブラッディスノー』の悪夢が、再び始まる合図なのだ。