RECORD

Eno.310 佐藤 陽介の記録

研究員たちの思惑


今週の分のデータ送信終わりっと。さて飲みに行くかなー



毎週末戦闘データを送信するという契約に基づき、その役目を果たす。
魔法少女は一度大きく伸びをすると、宿泊所を後にしようとした。

ーー聞こえるかい佐藤くん?



突如杖の先端。宝石のような意匠が明滅し魔法少女に話しかける。
聞き覚えのある研究員の声から察するに通話機能を有していたのだろうと
魔法少女は判断して応答する。

おー、聞こえてる聞こえてる。なにかあった?


……えーっとね。何もなくて・・・・・驚いてる



要領を得ない回答に魔法少女は首を傾げた。

え? 何も無いなら良くない?


良くないんだなコレが!


どういうこと?



通話相手の様子がなにやらおかしいので
身に覚えのない魔法少女はひとまず詳細を聞く事にした。

いや、魔法少女になったんだよ!? しかも戦闘経験が無いのに異世界で試合!


色々あるハズじゃん! 定番の『俺は男だ』イベントとか! 不慣れな戦闘を克服する為、熟練者に戦闘指南を受けていく事で育む親密な関係とかさぁ!?


は、はぁ……? なるほど?



魔法少女は気の抜けた相槌を打つ。
研究施設の人間たちは一体何を望んでいたのだろうか……

成人男性が突然魔法少女となり、戸惑いながらも周りと打ち解けていく中で発生するTS特有のドタバタラブコメディがだなぁ!?


あ、無いですそういうの


ふぁーっく!! 我々の悲願が!! 折角凄いの作ったのにあんまりだ!!



理解は出来ないが彼らが本当は何を期待してフラウィウスに魔法少女を送り込んだのか。
なんとなく魔法少女は勘づいた。要するにロクでも無い事を期待していたのだと。

……こう、少女に接するような周りとの距離感にドキドキしたりとか


元気にドキドキしながら推し活してる。楽しい


全然魔法少女になったこと関係ないじゃん! 何をやってるんだ!


うるせぇー! 妙な性癖押しつけてくるんじゃねぇー!



魔法少女は杖を一度床に叩きつけると
『ピロン』という通話終了を告げる電子音が響き、静寂が訪れた。


……飲みに行こ