RECORD

Eno.133 噂話の記録

花祭り

このお祭りではね
雨の日には不思議な出会いが訪れて
晴れの日には、素敵な出会いが訪れるんだよ。

誰かがそんな話をしていたころもあった。

春にこの街は、花祭りを行う。
花の描かれた栞を贈るお祭り。
花言葉を贈るお祭りだ。

この日はどうにも、『雨降る旧校舎』とは、繋がりやすいのだ。


――いつかの記憶。

賑やかな声も、花の香りもしない。

――誰も居ない。

気味が悪いほどに静かだ。

ぽつ
 
    ポツ

        ポツ。


空から振ってくる雨は、辺りの草花の装飾を通して光を反射してか。
うっすらと緑がかって幻想的な雨に見えた。

「また、迷い込んできたのか」

「… これはまた珍しいお客さんだ」
「警戒しなくていいよ、何かするつもりはない」

「君らがいた街とは、少し違う街さ どうにも最近、そちらと繋がりやすくなってしまっているらしい」

「何も出てこないように努力はしている 見回りしながらね」
「最近は平和さ 迷い込んでくる人らがいるってこと以外はね」

……。

「人の姿でいる、という点では僕も同じだからね」
「といっても、僕なんかは比べたら悪いくらいの下級だけどさ」
「人だと思ってくれたかい?」

「まぁ最も人には近いのは確かだし、大した能力もないからさ」
「昔はね、何とも思わなかったんだけどさ どうにもね」

「僕には親の事をどうにかできる相手ではないのは、わかりきっているからね」
「被害者を出さないようにするのが、僕にできるあがきなんだ」


「こういう人に近い形で作られているとね、こんな存在でも思う事は多くてさ。後悔だってあるし」
「だからちょっとだけ、君たちに興味があってさ」
「他にそういう方を見たことなかったし」


人と怪異のペアというのを。


「本来、そういう関係を築くというのは難しい事だろうからね。僕からしたら、理想の関係だと思うよ」

「でも小さいころからの仲なんだろう? きっとそういうことはしないだろうさ」

「なんだか少し羨ましいね。 対等って感じがあってさ」

――。

「一緒に出ることはできるけど、 誰かが迷い込んだときの為に、ずっとこっちにいるんだ」

「それにほら、僕もいつ消えるかわからないし、もしかしたらいつか、この感情も全部なくなって、前みたいな、何にも感じなかった頃に戻っちゃうかもって少し怖くてさ」

「この身体自体も、犠牲者の身体そのまま使ってるだけだしね。名前も借り物なんだ、 だからあちらで悲しむ人が出ないように 会っても同じには、振舞えないからね」

「……そうだね まぁまた君たちが、こっちに来ることがあったらその時は案内するよ」


…。


「……僕が一番忘れたいのは自分の罪で、後悔で」
「それを忘れてしまったらまた、繰り返す、気がするんだ」
「だから、正直、どうしたらいいか、わからなくてね」




僕でも、夢を見るのね



先生の、記憶ね、コレ。いつのかしら



……あの子と先生ってそっくりね



それとも、僕とかしら



どっちもかも。だって僕ら、“雨降る旧校舎の噂”だものね



というか、この噂のせいで、花栞の噂と繋がりやすいの、どうにかしてほしいのだわ……



どうして、噂ってこんなに他の話と交ざりやすくて、大きくなりやすいのかしらね