RECORD
Eno.404 Cの記録
無題
奇跡だとか魔法だとか、そういった力はこの男には無い。
では、どのようにして毎日を生きているのか。
聴覚では足音のほか、衣擦れの音、長い髪の擦れる音、呼吸の音、いくつもの囁かな音を。
空気の動く感覚は翼や全身の皮膚で感じ取って。
集中すれば、微かな匂いも判断材料の内。
いわゆる第六感と呼ばれるようなものも鋭敏に。
記憶力と想像力を常に頭の中で働かせて。
それらは、常人と比較すれば大層優れたものであるのは間違いはない。
それでも見えないハンデを補うには足りない。
この男はいつでも堂々としていて、
見えないハンデなんて感じさせないくらいに、なんでも見えている風に振る舞って、
時にはカマをかけて、時には曖昧な言葉で誤魔化して、
見えない世界への予測が、正解でも間違いでも問題がないように。
間違えても気にしない自分を、間違えていても気づかれないような言動を作り上げてきた。
そうしていれば大体の人間には、見えている人と大差なく過ごしているように見えるようだから。
人の顔が見えなくなってからというもの、必死になって藻掻いて足掻いて苦しんで、ようやくそうした生き方を身につけた。
見えない曖昧な世界は、やっぱり曖昧な世界のまま。自分が世界に存在しているという、確かな証はどこにもない。
でも、他者と刃を交える時だけは、違う。
では、どのようにして毎日を生きているのか。
聴覚では足音のほか、衣擦れの音、長い髪の擦れる音、呼吸の音、いくつもの囁かな音を。
空気の動く感覚は翼や全身の皮膚で感じ取って。
集中すれば、微かな匂いも判断材料の内。
いわゆる第六感と呼ばれるようなものも鋭敏に。
記憶力と想像力を常に頭の中で働かせて。
それらは、常人と比較すれば大層優れたものであるのは間違いはない。
それでも見えないハンデを補うには足りない。
この男はいつでも堂々としていて、
見えないハンデなんて感じさせないくらいに、なんでも見えている風に振る舞って、
時にはカマをかけて、時には曖昧な言葉で誤魔化して、
見えない世界への予測が、正解でも間違いでも問題がないように。
間違えても気にしない自分を、間違えていても気づかれないような言動を作り上げてきた。
そうしていれば大体の人間には、見えている人と大差なく過ごしているように見えるようだから。
人の顔が見えなくなってからというもの、必死になって藻掻いて足掻いて苦しんで、ようやくそうした生き方を身につけた。
見えない曖昧な世界は、やっぱり曖昧な世界のまま。自分が世界に存在しているという、確かな証はどこにもない。
でも、他者と刃を交える時だけは、違う。