RECORD

Eno.285 ウィンター・ザ・リグレットエッジの記録

遠い日の話+1

「残念です、ウィンター」

その声が聞こえてくるまで、随分長かったように思う。
もしかしたら殺してすぐだったかもしれないけれど、
わたしにとっては凄く、凄く長かったと記憶している。

声に振り向いた先には、今しがた動かなくなった王――
電子精霊実体と同じ実体が、無表情で立っていた。
それも、5体。まったく同じ表情。まったく同じ見た目。
まったく同じ仕草。そして、

「「「「「ウィンター、あなたを捕らえなければなりません」」」」」

まったく同じ声を、まったく同じタイミングで呟いた。
わたしはといえば、最早明らかな『敗北』から目を逸らしながらも、
ナイフを振るった。振るい続けた。それが無駄だな、と気付くまで、ずっと。

気付いたのは、無数に現れる実体達が、あくまで『傷つけないように』
捕縛しようとしてわたしに切られ続けていると分かった時。
正確には、それと同時に――何かが割れる音が。
小さな何かではなく、とても巨大な何かが砕けて割れる音が。

……わたしの暮らしていた研究都市を守っていたバリアが、
わたしがここを攻める意味が、なくなってしまった音がした時、だった。
バリアの破片が地に落ちるのと同じように、ナイフが手から零れて床に落ちて跳ねた時、
わたしは電子精霊の実体達に取り押さえられていた。