RECORD

Eno.8 スフェーンの記録

EP14

天井に映し出された景色はまるで生の目で見ているように鮮やかに鮮明に写って見えるが、それらは投影された天気であることをみなさまわかって暮らしているのがこの中央都市セレシオンであることを皆様もうとっくの昔にご存知だと思われます。
毎日ランダムで起こる天気の様子に合わせ、箱の中では雨が降り、風が降り、記憶が上がる分けでありまして、大災害以前の星の暮らしは全くもって再現できているということをみなさまご存知かと思われます。
それでいてまた大災害の起こらぬように固く外からは閉ざされており、外の環境の影響を受けず、中央、及び四方の都市は各自運営されていることを皆様ご存知であります。

私たちは生存しております。
私たちは生存しなければいけません。
彼らは生存を示します。
それらが私たちの使命であります。


星は今日も回っている。正しい位置を示して。




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※以下、特制再放送




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「でもちまちままた作りたいんだよねぇ、服とか」



「服は二度と作らないってそれ作った時に言ってたじゃないですか」



結局手伝ってもらってたでしょう、ルチルとレピドライトに、と、スフェーンは呆れたように続けている。
彼女が着ているのは黒いセーラー服である。
セーラー襟には太いラインが2本。結ばれているリボンはサテン生地のスカーフ。その色もまた黒だった。
スカート裾には細かいフリルが施されている。これが彼女のお気に入りの可愛いポイントらしい。
昨今フリルだけで可愛い、なんてなあ、とぼやいたところ、舞台裏で蹴られたのは秘密。
インカローズは可愛いけど、カルミアはあんまり可愛い性格はしてないから。
閑話休題。

その制服はどこのものでもなく、彼女オリジナルのものであった。
フリルなんて普通の制服に付くはずもないから。
それでも彼女はこれを着ることを望んでいた。


「憧れの対象だからねえ、制服」



彼女は組んだ手の上に顎を置きながらそうやって笑ったか。
憧れはまあそうなんだろうが。


「服なんていくらでもあって困らないしぃ」



そんなふうにぼやく間。
キッチンの方からがたことと音がして、男が顔を出している。



「………」



かなりの大柄。見下ろす目線は伏せ目がちである。
そういうふうに首を下へ傾けているから、センター分けにした茶色の硬い前髪髪は長く、頬に垂れかかっている。長い髪は束ねられていた。
白いシャツの上にはエプロンをかけて。若干のラフな服装。
金色の瞳はこちらを向いていた。


「ルチル」



インカローズはとスフェーンの声が重なって。
彼の持つコーヒーカップからは湯気がたちのぼっていた。

「…話し声は聞こえてたけど、スフェーンもいたんだね」



その瞳は緩く細まっている。
体格から想像できる低い声。しかし、どこか安心できる優しい声色でこんにちはと挨拶をして。
男は──ルチルは、笑っていた。



また女の子に振られた?




口を開けばそればかり言いますね?」




──首に、銀の円環を引っ掛けたペンダントをしている。