RECORD
Eno.749 カイヴァリヤの記録
酒の肴 1
「"真実はワインの中に"、と人は言う……」
「敢えて酩酊に身を預け、思惑の柵から言葉を解き放つのも悪くはない。
酒の肴にひとつ、流れ者の好きそうな話をしてやろう」
*****
「私の故郷はネクトリア。
常に海中深くを漂う、水中移動都市とでもいうべき奇抜な人里だ」
「通常、そのような街を作るには莫大な知が必要とされる。
ヒトが暮らせる街を海中に作り、しかも移動式とするのだからな」
「だがネクトリアに水中都市を創り出す技術はない。タネは何だと思う?」
「ククク……答えは巨大生物!
我が愛すべき故郷は、2桶の水母の傘下に作られた集落なのだ」
「どうだ、いかにも旅人好みの特異な場所だろう……」
「いいや、此処は理の坩堝。
この程度で驚く者も、そう居ないか?」
「とかくネクトリアにおいて、空間は水母の肉体、律は水母の意思なのだ。
争いも災害もない傘の中は、外の人々に『海の楽園』と伝説めいた名で語られもした……」
「いや、語られている」
「もし私の世界を訪れることがあれば、探してみるがいい」
「水母たち、ことに慈母様と呼ばれるほうは、来訪を望む者を時折ネクトリアへ招くのだ。
彼女の考えは計り知れないが、どうにかお眼鏡に叶えば招待を受けるかもしれないぞ」
「敢えて酩酊に身を預け、思惑の柵から言葉を解き放つのも悪くはない。
酒の肴にひとつ、流れ者の好きそうな話をしてやろう」
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「私の故郷はネクトリア。
常に海中深くを漂う、水中移動都市とでもいうべき奇抜な人里だ」
「通常、そのような街を作るには莫大な知が必要とされる。
ヒトが暮らせる街を海中に作り、しかも移動式とするのだからな」
「だがネクトリアに水中都市を創り出す技術はない。タネは何だと思う?」
「ククク……答えは巨大生物!
我が愛すべき故郷は、2桶の水母の傘下に作られた集落なのだ」
「どうだ、いかにも旅人好みの特異な場所だろう……」
「いいや、此処は理の坩堝。
この程度で驚く者も、そう居ないか?」
「とかくネクトリアにおいて、空間は水母の肉体、律は水母の意思なのだ。
争いも災害もない傘の中は、外の人々に『海の楽園』と伝説めいた名で語られもした……」
「いや、語られている」
「もし私の世界を訪れることがあれば、探してみるがいい」
「水母たち、ことに慈母様と呼ばれるほうは、来訪を望む者を時折ネクトリアへ招くのだ。
彼女の考えは計り知れないが、どうにかお眼鏡に叶えば招待を受けるかもしれないぞ」