RECORD

Eno.245 YURIの記録

■元の世界へと

ラクショー☆


彼女は、早速購入した外世界渡航券を握り締めた。

元の世界へと戻るためのチケットだそうだ。
港湾局にこれを渡し、行きたい世界を伝えると渡航船に乗せてくれる。

「あっという間にお金溜まったしぃ~
 ウチ、戦うサイノーあるんじゃね?」



この世界には来たばかりだけど。何だか楽しそうな世界ではあるけれど。
家族が心配する。学校だってある。受験勉強だってしなきゃ。
何よりも。

「もう3日もまーくんの声聞いてないし」


ずっと圏外のままのPHS……ちょっと昔の通信機器だ。
デコデコとラインストーンで飾られ、様々なでかいぬいぐるみがくっつき
その待ち受け画面に映るツーショット。若い男性…まーくん、とやらと、彼女自身の。

「さ、チョッパヤで手続きしよ!」


見たことない生き物たちや異世界への興味よりも、
彼女の気持ちはまっすぐに彼氏へと向かっていた。
しかし。

「あれ、おかしいな」


数多の人々を元の世界へと帰してきたはずのこの船だが。
何故か彼女の世界を示す羅針盤が働かないらしい。

「えっ つまりどゆこと?」

「君を帰す場所が分からないから、帰れないってこと。今は、まだ」

「はァ? 無理やり連れてきて、帰れないって、マジムカツクんだけど?
 ……今は、ってコトは、なんとかなるってコト?」

「……おそらくは」


彼女の世界の座標を割り出す為、研究所で色々調べねばならないらしい。
……のだが、研究所は『アレーナ特区』の、外にある。

「異世界の人は、アレーナ特区の外には原則出られないんですよ。
 ──もちろん研究者の方から此方に来てもらう手配はしますけど、
 どうも博士、いま忙しいらしくて」


特区の外に出るためには、永住許可証とやらが必要らしくって。

「待つだけなんてマジショー性に合わんし」

「よし! YMMやる気まんまんモードでがんばる!」



女子高生は、再び外世界渡航券を握り締めた。
決意のこぶしの中で、くしゃりと、音がした。