RECORD
Eno.457 ルルベル・シャンパーニュの記録
結局、あの日のことは"なかったこと"になった。
お母さまの様子を見ても、いつもと変わらなかった。
イザベラ…も、恐らく知らないだろう。二人で顔を合わせれば、
いつも通りに鼻で笑われたのだから。
いつも通り。
いつも通り。
いつも、通り。
では、なくなった日。
『■■■!みーつけた!!』
リヒトは、鉄格子の窓から私に会いに来るようになった。
傍から見れば、地面に顔をつけながら何かと話してる姿という不審極まりないのに、
リヒトはあの日と変わらず私に話しかけに来てくれて、
うちで焼いたお菓子とか、ここに来る途中で見かけた綺麗な花だとか、
隙間があるのをいいことに、色々なものを贈ってきたものだから、
いつもそれを何処かに隠すのに苦労をした。
リヒトは、変わってる。
可哀想だから構ってるんでしょ。
『んぇ?…まぁ、初めはそうだったけど、
今は普通に■■■と話したくて来てるし。』
ただ自尊心を満たしたいだけでしょ。
『じそ…?なにそれ、美味しいの?』
…。
同情したら、いいことがあるからそうしてるんでしょ。
『■■■と話せるのがいいことじゃん。』
ずっと、そんな調子。
"線"で嘘をついてないか見ても、リヒトはずっと真っ直ぐだった。
嬉しかったなんて、単純に喜びたくなかったのに。
『俺さ、いつか勇者になるんだ。』
またある日のこと。
リヒトは青空を見上げながら、私は地下の床を見下ろしながら。
この世界で≪勇者≫なんて、そう簡単になれないよ。
『でもなりたいんだ、夢だから。』
そう、夢があっていいね。
『だから、この先…パーティを組むことになったらさ、
■■■、一緒に冒険しよう!』
……でも…
『だって、シャンパーニュ夫人は、魔法が使えるようになったら~
って言ってたんだろ!?
それなら、■■■のその力も凄いけど…でも!認められるぐらいになったら!
外に出してくれるんじゃねーかなって!』
…でも…
『大丈夫!外に出られたら、真っ先に俺ん家来いよ!
…まぁ、男ばっかだけど…■■■が寝られる場所、作るからさ!』
…
『だから、一緒に頑張ろうぜ!』
…
……
………君って、残酷なこと、言うんだね。
今よりもっと、頑張れって。
『えっ!?…あ、いや、そういうつもりじゃ…
ももももちろん今だって■■■は頑張ってるぞ?!
だから、それを、無視してるわけじゃなくて…』
うん、分かってるよ。
あーあ、リヒトのせいで今日から二倍訓練しないとなー
『む、無理すんなよぉ■■■…ただでさえ指痛めてるんだから…』
がっくし
…と、項垂れるリヒトが、見ずとも分かる。だから、クスクス笑った。
その日から、私が目指す目標が変わった。
お母さま認めてもらうためじゃない。
リヒトと冒険に出かけるために、私は魔法を使うのだと。
与えられた課題だってこなせるようになれば、
いくらお母さまでも部屋から出すだろうさ。
その後、若くして全ての魔法を極めた者――"大賢者"の称号が与えられるのも、程なくしてであった。
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懺悔*****
結局、あの日のことは"なかったこと"になった。
お母さまの様子を見ても、いつもと変わらなかった。
イザベラ…も、恐らく知らないだろう。二人で顔を合わせれば、
いつも通りに鼻で笑われたのだから。
いつも通り。
いつも通り。
いつも、通り。
では、なくなった日。
『■■■!みーつけた!!』
リヒトは、鉄格子の窓から私に会いに来るようになった。
傍から見れば、地面に顔をつけながら何かと話してる姿という不審極まりないのに、
リヒトはあの日と変わらず私に話しかけに来てくれて、
うちで焼いたお菓子とか、ここに来る途中で見かけた綺麗な花だとか、
隙間があるのをいいことに、色々なものを贈ってきたものだから、
いつもそれを何処かに隠すのに苦労をした。
リヒトは、変わってる。
可哀想だから構ってるんでしょ。
『んぇ?…まぁ、初めはそうだったけど、
今は普通に■■■と話したくて来てるし。』
ただ自尊心を満たしたいだけでしょ。
『じそ…?なにそれ、美味しいの?』
…。
同情したら、いいことがあるからそうしてるんでしょ。
『■■■と話せるのがいいことじゃん。』
ずっと、そんな調子。
"線"で嘘をついてないか見ても、リヒトはずっと真っ直ぐだった。
嬉しかったなんて、単純に喜びたくなかったのに。
『俺さ、いつか勇者になるんだ。』
またある日のこと。
リヒトは青空を見上げながら、私は地下の床を見下ろしながら。
この世界で≪勇者≫なんて、そう簡単になれないよ。
『でもなりたいんだ、夢だから。』
そう、夢があっていいね。
『だから、この先…パーティを組むことになったらさ、
■■■、一緒に冒険しよう!』
……でも…
『だって、シャンパーニュ夫人は、魔法が使えるようになったら~
って言ってたんだろ!?
それなら、■■■のその力も凄いけど…でも!認められるぐらいになったら!
外に出してくれるんじゃねーかなって!』
…でも…
『大丈夫!外に出られたら、真っ先に俺ん家来いよ!
…まぁ、男ばっかだけど…■■■が寝られる場所、作るからさ!』
…
『だから、一緒に頑張ろうぜ!』
…
……
………君って、残酷なこと、言うんだね。
今よりもっと、頑張れって。
『えっ!?…あ、いや、そういうつもりじゃ…
ももももちろん今だって■■■は頑張ってるぞ?!
だから、それを、無視してるわけじゃなくて…』
うん、分かってるよ。
あーあ、リヒトのせいで今日から二倍訓練しないとなー
『む、無理すんなよぉ■■■…ただでさえ指痛めてるんだから…』
がっくし
…と、項垂れるリヒトが、見ずとも分かる。だから、クスクス笑った。
その日から、私が目指す目標が変わった。
お母さま認めてもらうためじゃない。
リヒトと冒険に出かけるために、私は魔法を使うのだと。
与えられた課題だってこなせるようになれば、
いくらお母さまでも部屋から出すだろうさ。
その後、若くして全ての魔法を極めた者――"大賢者"の称号が与えられるのも、程なくしてであった。
「皆は称えたわ、表向きは。」
「お母様は最期まで、そうなった私を認めなかったわね。」