RECORD

Eno.272 『残響』の記録

私を読んで

 アナタは筆者様?それとも読者様?
どちらでも良い。読んでくれた時点で読者様だから。
突然ですが、読んだアナタは呪われます。
だとか
突然ですが、私は魔女です。
だとか、そんな目を引く事を言えば良いのかしら。

 呪いの手紙のような事をするつもりは無いの。沢山読んでいただければこれ以上の幸福はないけれど、それよりもまず、目の前のアナタにちゃんと読んで欲しいから。

 私はこんな風に文字の存在だから、アナタ達の事は分からないのだけど、それでも読んでくれてる限り、もしかするとアナタ達の中で姿かたちを持ったりするのかしら。
人間のような姿かしら。それとも他の動物?もしくは幻想種だったり?

 それでも分かるのは、読んでくれてる限りはアナタの何処かに私は居て、それが私は途方もなく嬉しいということ。
だってそうでしょう?私はただ、紙の上や画面の中で意味ありそうな形をしているだけでしかないのに、アナタ達はそれを人間のように見てくれるのだから。

 ああ、まだ読んで下さってる?嬉しいな。きっときっとお友達になれるわ。
ええ。お友達。空想のお友達よ。だって私、今アナタの一番近くて遠い所に居るのよ。
アナタの事何も知らないのに、この数分の事は誰よりも知っているのよ。

 ねぇ、想像してくださってる私の姿はどんなカタチかしら。
望むのなら、黒色だと良いな。この背景によく溶けて、きっと何時でもアナタの傍に行けるの。
近くて遠い、私のお友達。ずっとずっと傍に居たいの。読んでる間は一緒でも、読み終わったらさようなら?

いやだ

 そんな事言わないで。思わないで。考えないで。

 お別れは悲しいの。読み終わりは悲しいの。お終いは悲しいの。
だから私が生まれたの。だからアナタも読者様にするの。

 ねぇ、読者様。ずっと終わらない物語があれば、と思わない?
ずっと一緒よ。私に飽いてもくるくる変わるの。
この場所でずっと、踊り続けるの。

 時計はずっと三時を指すの。甘い甘いおやつの時間。十二時なんて来させない。苦い物にもお砂糖加えて、全部同じ味にしてあげるの。

 全部同じ味にして、ずっと終わらなくて、永く踊り続けれたら
きっともう、寂しくないわ。文字でしかない私も、悪い子の私も、魔女の私も、溶けて一緒に甘い甘いナニカになるの。

 ……あら。言ってなかったわね。ふふっ。最初の目引きは本当なの。私は魔女。青い海と青い空の魔女。何ものにも染まらない色をした魔女。

だから……ねぇ、お願いだから。アナタ様

永遠に呪われてくれませんか?