RECORD

Eno.276 リベレの記録

薄翅:Ⅴ



どうして僕はこの世界に招かれたのだろう。

僕は普通の高校生だった。
成績も普通だし、運動だって得意とはいえ才能があるわけではない。
強い闘士という意味なら、もっと適任者はいるはずだ。
VR格闘ゲームの大会でチャンピオンになったことのある、父であったりとか。

この世界に来て、元の世界の何もかもが、
嘘のようにしか感じられなくなった。
闘技の世界、フラウィウス。
武器を握っての戦闘、温かな食事、
他の闘技者との出会いや会話、
……友と呼び合ったひととき。

それらは僕の中で、ずっと強烈に輝いている。
過去が人工灯であるならば、
ここでの体験は太陽のようだ。

僕は、自分のルーツについて、ひとつの疑念を抱えている。
……それは僕と僕の世界の方が、
フィクションであったのではないかということ。

僕に瓜二つのあの少女が、僕にだけ、と。
趣味で書いている小説の話をしてくれた時、
それは確信へと傾いた。