RECORD

Eno.279 ネモフィラの記録

ネモフィラという悪魔

ネモフィラという悪魔は、ネモフィラという名前ではない。
悪魔にとって真名は己の存在を縛る大事なものであり、基本的には明かされるものではない。
そもそも真名があると言う事すら基本的には開示する事はないだろう。だが……

「……真名を明かし合う子が現れるとは。来た時は思いもせんかったな」



此処に来て一番の課題だったこと。それは地獄にあまりにも帰りたくなさすぎたことと……
それ以外の選択肢を選ぶときに、孤独なのが課題だったこと。寂しさという一番大きな問題が……満たされてしまった。

「……全く、何があるか分からない生涯よ。本当に……楽しいモノじゃな」



満ちる、という感覚を初めて覚えたその悪魔は日記を書き終え、空を見上げる。

「……雨の日が大好きになりそうじゃな。これから」

これからの生涯は大好きな雨の化身と共に歩むのかと思えば。思わず表情が緩んでしまう。
期待に胸を弾ませ、悪魔は今日も。今度は寂しくない日へ向かって。歩みを進めた。