RECORD
ある日の出来事っす!

「やっぱ試合って最高すよねえ……
ワクワクってする気持ちが、毎回試合前から爆発しそうっす!」

「咲名、可愛いものも好きっすけど……
真剣勝負もめちゃめちゃ大好きっす〜!」

「ふふ、やっぱフラウィウスって楽しい場所っすよね〜っ」

「…………」

「誰?」

「咲名は鬼剣舞咲名っす!」

「鬼剣舞咲名ちゃん。なるほど、初対面すね」

「咲名は君の試合見たことあるっすよ〜!酒カスくん!」

「その名前で呼ぶってことは結構最初の方の見てたんすね。
……もしかしてファンだったり?」

「違うっすね!……ちな、名前とかどう呼んだら良いすか?」

「違うかあ……名前?」

「……あ〜、ここでは呑兵衛か酒カスで通してもいいすか?」

「じゃあ酒カスくんで!」

「俺から挙げといてなんだけどそこでその選択肢続行することあるんだ」

「……酒場で飲んでたら急に真隣座ってきたからビビったっすよ。
他にも空いてる席あるのにさも知り合いです、ていう顔してウーロン茶置くし」

「今から知り合いっすね!」

「そうっすね〜〜」

「てかわざわざ近づいてきたってことは俺に用なんすよね。
なんか話したいことでも?」

「っす!ちょっと気になって聞きにきたことがあるっす!」

「へえ、本当にあるんすね。一体何です?
好きな酒の話?一日に飲んでる量?肝臓の検査結果?」

「違うっす〜っ、咲名が聞きたいのは、その刀のこと!」

「……刀ぁ?」

「そう!それで戦ったりしないんすか?
多分、それ苗刀として使えるっすよね?」

「……や〜、使えるかもしれないすけどねえ。
俺がここだと上手く扱いきれないからなあ」

「そうなんす?じゃあなんで持ってるっすか?」

「あっそれは……
たまたま拾って持ってきたんすよ!あはは〜っ」

「……や、流石にこれは無理があるな。
いや、まあこれは俺の私物ですけど……」

「おお、やっぱり〜っ」

「けど俺、これ使うと試合盛り上げができないんすよ。
……どうしても、気合い入りすぎるというか」

「じゃあじゃあ、ますます良いじゃないっすか!
それってマジで本気の勝負かできるってことっすよね!」

「え、まあ……そうなるんすかねえ……?
……咲名ちゃん、戦うの好きなんすか?」

「もちっす!」

「へえ〜……意外ぃ〜……それで、ガチの勝負も?」

「大もちっす! 咲名、試合中の怪我とか全然怖くないっすよ!」

「……」

「……ま、マジで?すごいねえ、君……」

「ね、ね!酒カスくんって強い人っすよね?
咲名、強い人といーっぱい戦いたいんすよ!……どうすか!?」

「んん?……期待外させて悪いすけど、俺強くないっすよ。多分弱い方っす。
そんな戦ったことはほぼ無いし」

「え〜?ほんとすか?」

「……えらい疑いの眼を向けるすねえ。そんな自信を持つほどすか?」

「持つほどっす!だって」

「本当に戦ったことない人は
あんな速く酒瓶振り落とせないっすよ?」

「…………」

「振り落とすだけじゃないっす!あの蹴りだってそう!
めちゃ重そうなのに、めっちゃ動き速かったっす!
全然見えなくて……!」

「……そりゃあどうも。よく見ててくれてて照れちゃうっすねえ。
でも俺、本当に強くは」

「強くないなら、ここで強くなればいいんすよ!」

「……ここで?」

「ここで!」

「確かに剣闘試合は、娯楽として楽しんでる人は多いっす!
けど、その中に強さを求めて刃を磨きながら試合に挑んでる人は
……たっくさんいるっす!咲名もその一人っすし!」

「へえ、そうなんすねえ……」

「……ね、酒カスくんはどうして戦ってたんすか?
あ、ここでじゃなくて、他のとこで!」

「……どうして、っすか?
それは……」

「……守りたいものがある、から?」

「お!?」

「あっやべ、いやそんな大層な」

「めちゃかっこいいっす!すっごく大層な理由じゃないすか!
それならここで強くなるのもめちゃ良いじゃないすか〜!」

「それもわかるっすけど」

「ならその刀ぶんぶんってして、
バサバサーっと全部斬り捨て御免!しちゃうっす!」

「ああ〜〜……」

「……けど、強くなる、か……」

「……坊っちゃんならそうするだろうな」

「坊っちゃん?」

「や、なんでもないっすよ。独り言っす」

「……そうすねえ。まあ少し考えてみますよ」

「!! やった〜っす!じゃあじゃあ、今度バトってほしいっす!」

「へ、まだやるって決めたわけじゃ」

「それじゃあ咲名はここで失礼するっす!
また闘技場とかで〜っ!ではでは〜っす!」

「えっちょ」

「……い、行っちまったよ。
嵐みたいな子だったな……」