RECORD
Eno.289 空木 颯斗の記録
思考《参》
目が覚めたら、今どこに居るかが分からなかった。
ここがフラウィウスだという事を思い出すのにしばらく時間がかかった。
思い出すまでの間今までで一番大きな焦燥感に駆られた。
ここじゃない。今居るべきはここじゃない。
でも、家でもない。あの施設でもない。あの世界でも。
どこでもない。ならどこにいればいいんだろう。
分からない。分からないから怖い。
怖い。
かえりたい。
一人きりの室内で、頭を抱えて部屋の隅に座っていた。
頭の中がうるさい。かえりたいってなんだ。
居場所はどこでもいい。ここでもいい。自分の事を少なからず思う人がいるから。
かえりたい。どこに。うるさい。自分じゃないみたい。
自分はどこに居るんだろう。
きっと三年前のあの日から、どこにもいないのかもしれない。
足が冷たい。目の奥が眩しい。手の先から溶けていくようだった。
頭の中はうるさくて、吐く息は浅い。
こうなるのか。
力を使いすぎると、近付きすぎるんだ。
わかった。駄目だ。
人間が星に手を伸ばすなんて、やっぱり、
馬鹿げて。
やめよう。
我慢ばかりだったし。
楽になろう。
お道化た言葉で何とかするのも、
マスクで顔を隠すのも、
ぜんぶやめよう。
✦


朝。
扉を叩いてから5分が経った。
この時間ならば既に起きている筈だし、連絡に既読も付かないのはおかしい。
流石に心配になって来てみれば、何の返事もない。
……鍵は開いているから、入る事は出来る。
少し粘れば出てくるかとも思ったが、どうやらそうでもない様子だから。
気が引けるが、仕方ない。
最悪の事態になる事の方が面倒臭い。
「……邪魔すんぞ」
だから、扉を開いた。
甲高い音。

まるで、星が煌めく時のような。
剣印がす、と横に切られた。
ここがフラウィウスだという事を思い出すのにしばらく時間がかかった。
思い出すまでの間今までで一番大きな焦燥感に駆られた。
ここじゃない。今居るべきはここじゃない。
でも、家でもない。あの施設でもない。あの世界でも。
どこでもない。ならどこにいればいいんだろう。
分からない。分からないから怖い。
怖い。
かえりたい。
一人きりの室内で、頭を抱えて部屋の隅に座っていた。
頭の中がうるさい。かえりたいってなんだ。
居場所はどこでもいい。ここでもいい。自分の事を少なからず思う人がいるから。
かえりたい。どこに。うるさい。自分じゃないみたい。
自分はどこに居るんだろう。
きっと三年前のあの日から、どこにもいないのかもしれない。
足が冷たい。目の奥が眩しい。手の先から溶けていくようだった。
頭の中はうるさくて、吐く息は浅い。
こうなるのか。
力を使いすぎると、近付きすぎるんだ。
わかった。駄目だ。
人間が星に手を伸ばすなんて、やっぱり、
馬鹿げて。
やめよう。
我慢ばかりだったし。
楽になろう。
お道化た言葉で何とかするのも、
マスクで顔を隠すのも、
ぜんぶやめよう。
✦

「……おい。颯斗! 返事しろ!」

「なあってば。マジ勝手に入るからな、ホント」
朝。
扉を叩いてから5分が経った。
この時間ならば既に起きている筈だし、連絡に既読も付かないのはおかしい。
流石に心配になって来てみれば、何の返事もない。
……鍵は開いているから、入る事は出来る。
少し粘れば出てくるかとも思ったが、どうやらそうでもない様子だから。
気が引けるが、仕方ない。
最悪の事態になる事の方が面倒臭い。
「……邪魔すんぞ」
だから、扉を開いた。
甲高い音。

まるで、星が煌めく時のような。
剣印がす、と横に切られた。