RECORD
Eno.457 ルルベル・シャンパーニュの記録
神さまは、私たちなんて見ていないと思った。
あのお母さまから私に、『イザベラが見つかったら連絡しろ』と手紙が来るものだから、よっぽど彼女が心配なのだろうと思った。
式典やら魔王の情報収集やらで色々忙しい私の事情を全て無視して、それを最優先しろと言ってくるのだもの。
正直、"線"さえ見えれば簡単に見つかるけど…お母さまに色目なんて使いたくなかったから、『見つかったら』とだけ返事を返しておいた。
その数日後、まさか西の都でお姉さまを見つけるなんて思ってもいなかった。
治安の悪い裏通りは宿までの近道になるからとリヒトらと歩いていた時、
数ある娼館の並びの1つから、同じ顔をした赤い髪の女が男と出てきた。
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一目見て分かるのは、双子だからだろうか。
向こうは気付いておらず、男と談笑しながら通り過ぎていった。
楽しそう……という割には、笑顔は張り付いていたようにも見えて。
その後、宿に帰ってから急用を思い出したと適当に理由をつけ、外に出た。
向かったのはあの娼館。真っ先に受付へと向かい、お姉さまを"予約"した。
色々難癖をつけてきたが、金さえ積めば性別を偽り、偽名で予約が取れるとても良心的な娼館であった。
内装も…まぁ、お察し。外に出るほどの余裕はなかったから、表通りで購入したパンでも食べながら、部屋で時間を潰していた。
そして、感動のその時がきた。
『――はじめまして旦那さま、私が……え?』
流石に、同じ顔を前にすれば嫌でも思い出すだろう。
なんでという疑問に、屈辱を感じる"線"が見え、私は心に愉悦を覚える。
叩きたい言葉はあるけれど、まずは先に用件を伝えた。そのついでに、何があったかも聞き出す。
イザベラは"祝福の仔"として教育を受け、ハイレベルのギルドへと派遣され、パーティを組んだ。
ところが、旅は順調とはいかず、リーダーの素行が段々と悪くなり、パーティ内の治安が悪化。
女性陣は金稼ぎのために男と寝かされたが、それはすぐに酒なりへと消えていき、
身売りを余儀なくされたお姉さまはこの娼館へと売られた。
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そう諭せば、あからさまに気まずそうな顔。
そうよね、ええ、きっとそう。こんな恥だらけのものを抱えたまま家に戻るなんて、そのプライドが許せないでしょう。
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なんて。嫌がる言葉を並べれば、血相を変えて私にしがみつく。
やめてくれ。そんなことをしたら恥ずかしさで死ぬ。お母さまどころかお父さまにまで勘当されてしまう。
とっくの昔に亡き者にされていた私に、そう言うんだ?
鼻で笑い、大金を目の前に置いた。黙っててやる、だが、二度と私の名も存在も語るなと。
そう、所謂手切れ金というものだ。向こうと違って、こちらは金銭に困っていない。
金を前にすれば、お姉さまは分かりやすく大人しくなり、大して気持ちも籠ってないだろうありがとうを連呼した。
そうして、感動の再会は呆気なく終わった。
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私は笑った。娼館を出てから、ずっと、ずぅっと、笑いながら歩いていた。
気が狂ったと他人に怪しげな眼で見られても、ちぃとも気にしはしなかった。
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笑って。笑って。笑って。
そして、思った。神さまなんて、私たちのことを見ちゃいないと。
何が"祝福の仔"だ。
何が"無価値の仔"だ。
神の加護がかかったのだと言われている癖に、こんな惨めになっても神さまはお姉さまを助けなかった。
それなら、誰が私たちを"祝福"して、誰が"無価値"という烙印を押している?
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分からない。分かりたくも、ない。
肝心な時に助けてくれない神さまなんて、私には、
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嗚呼、嫌な気分だ。
"祝福"と"無価値"
神さまは、私たちなんて見ていないと思った。
あのお母さまから私に、『イザベラが見つかったら連絡しろ』と手紙が来るものだから、よっぽど彼女が心配なのだろうと思った。
式典やら魔王の情報収集やらで色々忙しい私の事情を全て無視して、それを最優先しろと言ってくるのだもの。
正直、"線"さえ見えれば簡単に見つかるけど…お母さまに色目なんて使いたくなかったから、『見つかったら』とだけ返事を返しておいた。
その数日後、まさか西の都でお姉さまを見つけるなんて思ってもいなかった。
治安の悪い裏通りは宿までの近道になるからとリヒトらと歩いていた時、
数ある娼館の並びの1つから、同じ顔をした赤い髪の女が男と出てきた。
「ぁ」
一目見て分かるのは、双子だからだろうか。
向こうは気付いておらず、男と談笑しながら通り過ぎていった。
楽しそう……という割には、笑顔は張り付いていたようにも見えて。
その後、宿に帰ってから急用を思い出したと適当に理由をつけ、外に出た。
向かったのはあの娼館。真っ先に受付へと向かい、お姉さまを"予約"した。
色々難癖をつけてきたが、金さえ積めば性別を偽り、偽名で予約が取れるとても良心的な娼館であった。
内装も…まぁ、お察し。外に出るほどの余裕はなかったから、表通りで購入したパンでも食べながら、部屋で時間を潰していた。
そして、感動のその時がきた。
『――はじめまして旦那さま、私が……え?』
流石に、同じ顔を前にすれば嫌でも思い出すだろう。
なんでという疑問に、屈辱を感じる"線"が見え、私は心に愉悦を覚える。
叩きたい言葉はあるけれど、まずは先に用件を伝えた。そのついでに、何があったかも聞き出す。
イザベラは"祝福の仔"として教育を受け、ハイレベルのギルドへと派遣され、パーティを組んだ。
ところが、旅は順調とはいかず、リーダーの素行が段々と悪くなり、パーティ内の治安が悪化。
女性陣は金稼ぎのために男と寝かされたが、それはすぐに酒なりへと消えていき、
身売りを余儀なくされたお姉さまはこの娼館へと売られた。
「お母さまの元に帰ればいいのに」
そう諭せば、あからさまに気まずそうな顔。
そうよね、ええ、きっとそう。こんな恥だらけのものを抱えたまま家に戻るなんて、そのプライドが許せないでしょう。
「お母さまから、貴方を見つけてと連絡があったから。
…じゃあ、連絡しておくわね。」
なんて。嫌がる言葉を並べれば、血相を変えて私にしがみつく。
やめてくれ。そんなことをしたら恥ずかしさで死ぬ。お母さまどころかお父さまにまで勘当されてしまう。
とっくの昔に亡き者にされていた私に、そう言うんだ?
鼻で笑い、大金を目の前に置いた。黙っててやる、だが、二度と私の名も存在も語るなと。
そう、所謂手切れ金というものだ。向こうと違って、こちらは金銭に困っていない。
金を前にすれば、お姉さまは分かりやすく大人しくなり、大して気持ちも籠ってないだろうありがとうを連呼した。
そうして、感動の再会は呆気なく終わった。
「アハハハ!!!!!」
私は笑った。娼館を出てから、ずっと、ずぅっと、笑いながら歩いていた。
気が狂ったと他人に怪しげな眼で見られても、ちぃとも気にしはしなかった。
「アハハ!!アハハ、ハハ………」
笑って。笑って。笑って。
そして、思った。神さまなんて、私たちのことを見ちゃいないと。
何が"祝福の仔"だ。
何が"無価値の仔"だ。
神の加護がかかったのだと言われている癖に、こんな惨めになっても神さまはお姉さまを助けなかった。
それなら、誰が私たちを"祝福"して、誰が"無価値"という烙印を押している?
「………」
分からない。分かりたくも、ない。
肝心な時に助けてくれない神さまなんて、私には、
「…帰ろう。」
嗚呼、嫌な気分だ。