RECORD

Eno.134 キィランの記録

【1 闘技世界へ】


 シャル様と共に再びフラウィウスへ訪れた。
 友人たちと再会したシャル様は、
 そのまま逃げてしまった。

 ……私は、追わなかった。
 『お前も敵だ』と言われたのを覚えている。
 あの時のぎらついた青の瞳を覚えている。
 私では、シャル様を救えない。

  ◇

 酒場で私は悠々と過ごしている。
 飲んで食べて私闘、乱闘。
 実力を隠す必要のなくなった私は自由だ。

 ……シャル様とは顔を合わせないようにしている。
 シャル様に悪い輩が近付かぬよう見守りはするが、
 シャル様との交流は避けた。

 主従の距離感じゃない。理解はしている。
 けれど現状と複雑な感情が邪魔をした。
 いつか、ちゃんとした主従になれる日が来るのでしょうか。

 このままは良くない。
 いずれふたりでちゃんと話し合わねば。
 けれど何を話すべきか分からない。
 『敵』の言葉はシャル様に届きますか?

「…………」


 目を逸らした。
 見ない振りをして酒場でふざけた。
 ごめんなさい、今は、まだ。