RECORD

Eno.745 サンデー・T・ホッピンシャワーの記録

よくある話

母さんは、『1』という数字が好きだった。
一番。一位。一個。唯一。一つだけ。
仕事も一番の成績を残し、一位であることに拘りを持っていた有能完璧主義。
『1』は完璧な数字。欠点等何一つない、他に何もいらない、神聖な、唯一無二の数字。
母さんは、『1』という数字が好きだった。……というか、異常な程偏愛していた。

母は一人。
父は一人。
だから、これから生まれてくる子供も、一人。



…………の、筈だったじゃん?


一つだったものが、偶然分かたれた。
唯一無二の数字が、二つに分かれるなんて、あってはならないことだ。
子供は『一人』だけでいい。二人はいらない。そんなものはあってはならない。
だから、





「……なんて、よくある話っしょ?双子だとか、捨て子だとか。」

「でも流されるんじゃなくて、産まれてすぐ外に棄てられるだけだったのは運がよかったな~って感じ。
おかげでこうして今もすっごい元気に生きてるし!」

「これも母さんの良心だったのかな。
そう、狂っていたけど、『たった一つ』だけ残されていた良心。」


「……え?なんですぐ棄てられて顔も知らないのにそんなことがわかるかって?
さぁ。なんでって言われてもなー。俺もなんでって感じ。偶然知っちゃった~的な?」

「…………でも、もしこの世界全てが作り物ならさ。
登場人物や資料集に親の設定や生い立ちが載っているだなんて、よくある話だろ?」