RECORD

Eno.111 アルバート・ヴァイルシェールの記録

自分がされていやなことはしないようにしましょう

「おかしい、とか、変、の前にさ
 本当は直さないとまずいものだって自覚はあんだよ」

「身体が危険だと知らせている証を喜んで、更に求めるなんてのは
 まず一生命体として破綻している、というのか……」

死にたくねぇのにいつかそんなん死ぬゥ!っつーか……
 俺ただでさえ瀕死まで行ったらそのまま死ぬのに!」


「だからまぁ、加減は要るし……要るとかじゃないんだよな。
 わかってる」

「わかってるだけ……」


「めちゃくちゃしんどかったよ。
 今までの俺の日常、当たり前、好きなこと。大事なもの。
 外に出たら全部全部異常だってされて」

「常識とか、良識とか覚える前にちいせぇ俺が覚えたのって
 ああ俺変なんだ、おかしいやつなんだ、ってとこで」

「頑張ったよ。俺が普通になれたらみんな助かるんだろうなって。
 でもやっぱ俺は変でおかしかったから、
 大好きなもの苦痛や大事なもの信仰を置いていけなかった」


「こわかった」

「誰も俺が好きでやってるって信じてくれなかったこととか、
 いろいろ」

「俺の生まれ育った10年、
 全部無駄で、あっちゃいけないことだったの?」

「親父とお袋が態々供物たり得る子を作ろうとしなきゃ俺はいなくて」

「じゃあまず生まれなきゃよかったのか?」


「…………」

「そういうんじゃないよな。そういうのじゃないけど」


「俺にとっての宝物みたいな思い出が、
 色んなやつに平気で踏みにじられたのが嫌だったんだろうな」

「なんにも知らないでいられたあの頃、きっとしあわせだったんだ」

「もうとっくに全部取り上げられてんのに、
 みっともなく代わりにすがってるみたいだよな」


「あっでも、なんも知らねぇまま贄として死ぬよりかは
 いろいろ知って解ってから焼べられる今のが気に入ってるぜ」

「やっぱわかんねぇよりわかったほうがいいもんな。
 たのしいことうれしいこと、やりたいこと」


クソッ!最初の話に戻るこれッ!!


「……………………、
 気にしなくていいとか、我慢するなとか、素直になったほうがとか」

「そういうのも実はちょっと、しんどい」

「良くないって思ってるからキツくて、
 けどこんな話すると今度は直す手段を探される」

「好きなことだし、たのしいことだし、
 俺の原点でもあるから失いたくない」

「じゃあどうしたいんだよとか置いておいてさ。
 なにもいわないで、そういうもんかって……
 ほっといてくれたら、気が楽だ」


「俺が元々そういう生態の生き物だったら、
 誰にも心配かけなくて済んだのかな」



「なんでいつも白黒決めなくちゃいけないんだろう」

「灰のままでいることって、そんなに罪なのか?」

「いや わかってるよ、そんな半端が過ごしていい社会でもないから、」

「なあなあで済ませていい知性なき獣じゃだめなんだ」

「きついよ なんで俺、人間に生まれてきたんだろう」


「親父とお袋には感謝してるし、
 化け物や獣になりたいわけじゃねえけどさ」