RECORD
Eno.246 餓赦髑髏の記録
回顧
わらわらと蛆湧く死肉齧り付き。繰り返し。
潰れた屋根の軒下滴る泥水啜って。繰り返し。
拙いながらも一所懸命に生き永らえ続けた。
明けぬ夜など無いと童子なりに盲信していた故に。
何せ、禍福は糾える縄の如しと言うだろ。
いつか、必ず、誰ぞに救われるってよ。
まあ、実際夜は明けた。
闇に慣れた瞳灼いて払われたのだから。
月覆い隠す柔らかくも強かな光射し込んだかと思えば。
涅槃の至りたる御仏、雲の切れ間から次々に出でて。
圧巻であった。曼荼羅もまるで大袈裟でないらしい。
微笑浮かべながらに手を差し伸べ出して。だからさ。
掠れた叫び上げて、必死こいて骨同然の腕伸ばしたよ。
けれども、届かない。届かない。
天蓋めいた光注ぐ空まで。遠過ぎて、眩し過ぎて。
目の逸らした先から、無数に浮かぶ淡い灯火があった。
大手の招きに寄せられてそれらは誘われていく。
死人の魂向こうへ連れて行く為と過ぎった。
奴等、生者に艱難辛苦与えるが趣味らしくって。
絶叫に一目くれず、為すべき為したと言わぬばかりに。
仏の行列、大勢の人魂連れて黒雲の彼方去っていった。
死に臥していりゃ、救いの手差し伸べられたのに。
生に喰らいついて、己は大馬鹿者ではあるまいか。
いいや。いいや。
馬鹿げてるのは夜明け無き現世に他ならん。
正直に生を渇望して何が悪いと言えようか。
恨み言募って止むを知らない。度し難い。赦し難い。
何処ぞで拾った濡羽の大太刀へ細身縋らせながらに。
月夜を背にして、己が両足で何処へなりと歩き出す。
これより往くは救い無き地獄道よ。
足掻かにゃならん。生きねばならん。必ずに。
なんて、戯けた大言壮語よな。
物知らずの童子、色の見えぬまま食うに困り果て。
焼け崩れた町々を永劫に右往左往し続けてさ。
必死の甲斐も無し。呆気無く死んじまったんだと。
潰れた屋根の軒下滴る泥水啜って。繰り返し。
拙いながらも一所懸命に生き永らえ続けた。
明けぬ夜など無いと童子なりに盲信していた故に。
何せ、禍福は糾える縄の如しと言うだろ。
いつか、必ず、誰ぞに救われるってよ。
まあ、実際夜は明けた。
闇に慣れた瞳灼いて払われたのだから。
月覆い隠す柔らかくも強かな光射し込んだかと思えば。
涅槃の至りたる御仏、雲の切れ間から次々に出でて。
圧巻であった。曼荼羅もまるで大袈裟でないらしい。
微笑浮かべながらに手を差し伸べ出して。だからさ。
掠れた叫び上げて、必死こいて骨同然の腕伸ばしたよ。
けれども、届かない。届かない。
天蓋めいた光注ぐ空まで。遠過ぎて、眩し過ぎて。
目の逸らした先から、無数に浮かぶ淡い灯火があった。
大手の招きに寄せられてそれらは誘われていく。
死人の魂向こうへ連れて行く為と過ぎった。
奴等、生者に艱難辛苦与えるが趣味らしくって。
絶叫に一目くれず、為すべき為したと言わぬばかりに。
仏の行列、大勢の人魂連れて黒雲の彼方去っていった。
死に臥していりゃ、救いの手差し伸べられたのに。
生に喰らいついて、己は大馬鹿者ではあるまいか。
いいや。いいや。
馬鹿げてるのは夜明け無き現世に他ならん。
正直に生を渇望して何が悪いと言えようか。
恨み言募って止むを知らない。度し難い。赦し難い。
何処ぞで拾った濡羽の大太刀へ細身縋らせながらに。
月夜を背にして、己が両足で何処へなりと歩き出す。
これより往くは救い無き地獄道よ。
足掻かにゃならん。生きねばならん。必ずに。
なんて、戯けた大言壮語よな。
物知らずの童子、色の見えぬまま食うに困り果て。
焼け崩れた町々を永劫に右往左往し続けてさ。
必死の甲斐も無し。呆気無く死んじまったんだと。