RECORD

Eno.8 スフェーンの記録

EP17.5




◇出来事

「……くっそ……」

その人が立ち去ってから数分後。
海風に撫でられた頬はようやく熱を覚ましてきて、けれども先のことを思い出して、また熱がぶり返した。
その人の指先の細さをまだ唇は覚えている。
その人の唇のやわこさをまだ耳は覚えていて、熱を持っている。片手を顔に当てる。
頭を抱えるようにしながら、空を見上げるようにした。

「…………くそ、」

途中までは普通のお出かけだったと思う。
鍛錬もなんだかんだでうまくいって、カフェでもより良く過ごせていた。
最後で少しおかしくなっただけ。

「…………ちょっとしたふれあいの一環、からかい………」

にしかすぎないんだろうけど。
ちょっと距離が近いから心臓と体温が忙しなくって仕方がない。
マーキング。
カマかけなのか、あるいは本当か。
男は触れられた耳を、人差し指と親指で揉みこんだ。

自分を強く律している。