RECORD
Eno.8 スフェーンの記録
NO episode:店主はなぜ抜擢されたと言うのか?
──────────────────
※以下、再放送
──────────────────
※以降、その話内でも指輪のことは触れられなかったらしい
──────────────────
──これはカメラの外。
ルチル役──ハロームは、カフェのセットのそばにあるベンチに腰掛けて、ぼうっと店先を見つめるようにしていた。
1人ごち、とも言えるその姿。
瞳は、どこか憂いを帯びているように見える。
撮影外でもハロームは、“ルチル”である時と全く印象は変わらない。
穏やかで、優しくて、ちょっと抜けているところがあるが、頼りにできる。
そんな男性。
幼い頃から同年代や年下、上でも彼より上をあまり見たことがないスフェーンにとって、彼はじいっと観察したり。
「……」
「ハローム」
「ああ、…ええと、…スフェーン」
「はい、“スフェーン”です」
興味を引く相手だった。
「……」
撮影の外、彼の左薬指には指輪が光っている。
差し入れのお茶のボトルを差し出しながら、ぼーっとしてどうしたんですか、と問おうとしたところで。
以前聞いたことを思い出した。
「……今日、彼女さんの誕生日でしたっけ」
「……嫁さんだよ」
目を伏せながら、苦笑いをして言う様子。
その苦味はどこまでも深いようで、しばらく眺めていれば、きっと見てるこちらも苦しくなってくるような、そんな痛みの笑顔だった。
すぐにそれを解いて、いつもの緩く穏やかな笑みに戻るのだけど。
「……だからちょっとだけ、思い返してたんだ」
「…彼女のことをね」
「………」
彼は未知の部分が多い。
彼とはかけ離れたレールで人生を過ごしてきたスフェーンにとって、興味を引く部分が多いとはそう言うことだった。
彼の話す話は、学んだことや見せられたものと確かに同じようで、それを聞くのが面白かった。
同時に、嫌な気分にもなったが。それは彼のせいではないから割愛をする。
だから、その人生にいた彼にとって、この舞台はあまりにも理不尽だと、考えていた。
彼の本心はわからない。見ようと思えばきっと見えるが、見ない。
わからないが、それはあんまりにも理不尽なことであることだけがわかる。
どうして穏やかに優しくいられるのかわからないが。
沈もうと思えば、悲しみにずっと沈んでいられるのだろう。
彼の愛情深さは、一年ほどしか接していない自分でもわかるものだから。
──────────────────
スフェーンと別れたハロームは指輪を見つめている。
これだけが証拠。
これだけが繋ぐ過去。
「……」
静かに、静かに。
怒りの濁流はそこの方でうねりをあげているが、それは表に出さない。
出したところで、なんだってどうしようもないことだけがわかっているから。
一年。
一年でも酷い苦痛がある。
初めからの彼らは、一体。
「……」

彼は指輪に唇を寄せている。
ただ、乗せるだけのキスをしている。
※以下、再放送
──────────────────
※以降、その話内でも指輪のことは触れられなかったらしい
──────────────────
──これはカメラの外。
ルチル役──ハロームは、カフェのセットのそばにあるベンチに腰掛けて、ぼうっと店先を見つめるようにしていた。
1人ごち、とも言えるその姿。
瞳は、どこか憂いを帯びているように見える。
撮影外でもハロームは、“ルチル”である時と全く印象は変わらない。
穏やかで、優しくて、ちょっと抜けているところがあるが、頼りにできる。
そんな男性。
幼い頃から同年代や年下、上でも彼より上をあまり見たことがないスフェーンにとって、彼はじいっと観察したり。
「……」
「ハローム」
「ああ、…ええと、…スフェーン」
「はい、“スフェーン”です」
興味を引く相手だった。
「……」
撮影の外、彼の左薬指には指輪が光っている。
差し入れのお茶のボトルを差し出しながら、ぼーっとしてどうしたんですか、と問おうとしたところで。
以前聞いたことを思い出した。
「……今日、彼女さんの誕生日でしたっけ」
「……嫁さんだよ」
目を伏せながら、苦笑いをして言う様子。
その苦味はどこまでも深いようで、しばらく眺めていれば、きっと見てるこちらも苦しくなってくるような、そんな痛みの笑顔だった。
すぐにそれを解いて、いつもの緩く穏やかな笑みに戻るのだけど。
「……だからちょっとだけ、思い返してたんだ」
「…彼女のことをね」
「………」
彼は未知の部分が多い。
彼とはかけ離れたレールで人生を過ごしてきたスフェーンにとって、興味を引く部分が多いとはそう言うことだった。
彼の話す話は、学んだことや見せられたものと確かに同じようで、それを聞くのが面白かった。
同時に、嫌な気分にもなったが。それは彼のせいではないから割愛をする。
だから、その人生にいた彼にとって、この舞台はあまりにも理不尽だと、考えていた。
彼の本心はわからない。見ようと思えばきっと見えるが、見ない。
わからないが、それはあんまりにも理不尽なことであることだけがわかる。
どうして穏やかに優しくいられるのかわからないが。
沈もうと思えば、悲しみにずっと沈んでいられるのだろう。
彼の愛情深さは、一年ほどしか接していない自分でもわかるものだから。
──────────────────
スフェーンと別れたハロームは指輪を見つめている。
これだけが証拠。
これだけが繋ぐ過去。
「……」
静かに、静かに。
怒りの濁流はそこの方でうねりをあげているが、それは表に出さない。
出したところで、なんだってどうしようもないことだけがわかっているから。
一年。
一年でも酷い苦痛がある。
初めからの彼らは、一体。
「……」

彼は指輪に唇を寄せている。
ただ、乗せるだけのキスをしている。