RECORD
Eno.253 クァリの記録
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「なんすかこれ」
「妖精類との対話用マニュアル」
「いや……無理ゲーすよね、これ」
「前任者達の血で書かれたマニュアルよ。あの森にいたのは純耳長種……未知の相手に警戒しすぎ、なんてこともないでしょう」
「全部守ってたら何も言えないすよこれ」
「問題なさそうな項目は潰していけばいいわ」
「まるでカナリアっすね」
「仕方ないじゃない、給料は良いんだから」
対話は休憩を交えつつ、五時間半に及んだ。
「…………」
「やられたっすね、先輩。あれが耳長仕草……」
「……話が早くて助かったわ。余りの日程で有給申請しようかしら」
「お、アリっすね。二人でどっか旅行行きません?」
「いいえ、あなたは残って資料作成。これは上司命令よ」
「ははっ。冗談すよねそれ…………えっ?」
●
妖精から渡されたものを食してはいけない。
妖精と契約をしてはいけない。
妖精は歌や踊りを好む。
妖精に名前を与えてはいけない。
妖精は金属と金属音を嫌う。
妖精は火を嫌う。
妖精を見てはいけない。
妖精を見ていることを気付かれてはいけない。
妖精との会話の始めには必ず挨拶をしなければいけない。
妖精との会話の終わりには――――
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「なんすかこれ」
「妖精類との対話用マニュアル」
「いや……無理ゲーすよね、これ」
「前任者達の血で書かれたマニュアルよ。あの森にいたのは純耳長種……未知の相手に警戒しすぎ、なんてこともないでしょう」
「全部守ってたら何も言えないすよこれ」
「問題なさそうな項目は潰していけばいいわ」
「まるでカナリアっすね」
「仕方ないじゃない、給料は良いんだから」
対話は休憩を交えつつ、五時間半に及んだ。
「…………」
「やられたっすね、先輩。あれが耳長仕草……」
「……話が早くて助かったわ。余りの日程で有給申請しようかしら」
「お、アリっすね。二人でどっか旅行行きません?」
「いいえ、あなたは残って資料作成。これは上司命令よ」
「ははっ。冗談すよねそれ…………えっ?」