RECORD

Eno.253 クァリの記録


妖精から渡されたものを食してはいけない。

妖精と契約をしてはいけない。

妖精は歌や踊りを好む。

妖精に名前を与えてはいけない。

妖精は金属と金属音を嫌う。

妖精は火を嫌う。

妖精を見てはいけない。

妖精を見ていることを気付かれてはいけない。

妖精との会話の始めには必ず挨拶をしなければいけない。

妖精との会話の終わりには――――









「なんすかこれ」

「妖精類との対話用マニュアル」

「いや……無理ゲーすよね、これ」

「前任者達の血で書かれたマニュアルよ。あの森にいたのは純耳長種ハイエルフ……未知の相手に警戒しすぎ、なんてこともないでしょう」

「全部守ってたら何も言えないすよこれ」

「問題なさそうな項目は潰していけばいいわ」

「まるでカナリアっすね」

「仕方ないじゃない、給料は良いんだから」






対話は休憩を交えつつ、五時間半に及んだ。





「…………」

「やられたっすね、先輩。あれが耳長エルフ仕草……」

「……話が早くて助かったわ。余りの日程で有給申請しようかしら」

「お、アリっすね。二人でどっか旅行行きません?」

「いいえ、あなたは残って資料作成。これは上司命令よ」

「ははっ。冗談すよねそれ…………えっ?」