RECORD

Eno.285 ウィンター・ザ・リグレットエッジの記録

寝起きの話

わたしの意識が眠らされてから覚醒するまで、
どれだけの時間が経ったのかはわからない。

目覚めたわたしは自分でも驚くほどゆっくりとしか動けず、
思考もまた同じようで、しばらくの間冷凍睡眠カプセルのガラス面を
かりかりかりかりと力なく引っ掻いていた。

ややあってから、ああ、ナイフを使えばいいじゃないか、と思い当たり、
異空間からリグレットナイフを取り出してガラスを切断して。
降りかかってきたガラスを退けるのに四苦八苦し、
やっと起き上がった目で見たのは、無数のコンソールと真っ暗な部屋。
コンソールも9割は黒い画面で、残りの1割は真っ青な画面でエラーを吐き、
その青い光以外は何も光源のない中で、わたしはひとりぼっちでいた。

そこから手をついて身体をカプセルから出すのに時間がかかり、
着地に失敗して顔と身体をしたたかに冷たい床にぶつけて、
そこからまた立ち上がるのにかなり時間を使った。

戦斧の柄を杖代わりにしてなんとか立ち上がって、
周囲の地形把握に努めると、どうも円形の部屋にわたしはいるらしい。
天井には破損の跡があったけれど、岩だか鉄板だか、
なんだかわからないものが詰まっていて光も入らないようだった。
見覚えのない部屋だから、多分冷凍睡眠に入ったあと移送されたんだろう。
でなければ、カプセルごと塔から射出されたか。
どちらにせよ、電子精霊はその場にはいなかった。

やがて出口らしい扉を見つけたけれど、傍のコンソールは青い画面のまま。
……まさか、目覚めて最初にやる事が電子精霊の殺害じゃなくて、
研究所でたまにやっていた機械の修理だなんて。それも碌な工具もなしに。
幸い、材料は周囲に無数にあるし――改造されたわたしの身体は、
どうも機械とかなり『親しい』状態になったようで。
しばらくそうやっていると、幸運にも突然機械が直り、扉がごうん、と開き始めた。

やった、と思ったのも束の間。
開いた扉から大量に流れ込んでくる水を前に、
そこそこしっかりと絶望したのを今でも時折思い出す。

慌てて息を吸い込んで、水に顔を突っ込んで目を開いた瞬間、
目の前に巨大なタコだかイカだかの吸盤と、烏鳶のある口が迫って慌て、
無駄に酸素を吐き出してしまい。そのまま視界の全てを覆われて、
また意識がブラック・アウトするまで、わたしは何が何だかわからないまま、
ただただ苦しい時間を過ごす事となった。