RECORD

Eno.133 噂話の記録

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『ねぇ、わたしをみつけた、あなたはなんてなまえなの?』

『……あら、なまえがないのね』

『じゃあ、わたしとおなじね?』

『ねぇ、あなたのねがいはなあに?』

入れ替わりの子と出会う前。
願いを叶える物として、意識がはっきりしたくらい。
出会った男に、そう問う。

男は、願いが叶う事を恐れた。
一緒にいてはくれたけど。
酷く嫌われていた。

何でもかんでも願いを叶えるのは、いけないらしい。

ひとつ、学んだこと。

――

旧校舎の黄昏時。
ひとり遊びをしていた子供をみつけた。

だから声をかけた。

『遊ぼうよ』

相手も帰りたくなかったみたいで。
二人で少しの間、遊んだんだっけ。

また会える?

そう尋ねられた。
本当は、君を食べたかっただけ人の輪に入りたかっただけ
だけど、気が付いたら、僕は本当の意味で、人の輪には入れた気分になって。
嬉しかった、楽しかった。

だから答えた。

『またあえるよ、また遊ぼう』


それからは、黄昏時、二人の時間。
沢山笑って、沢山遊んだ。
君が帰る時間。
帰る足取りは重くって、ぽつり、呟いた一言。

“帰りたくないな”

どうしてかわからなくて、素直にそう聞いたのを覚えてる。

親が揉めていて。仕事が大変みたいで。

このこは、きっと見てもらえていないのだな、と理解した。
なら、僕が叶えて上げれる事。

『辛いときは、いつでも俺、話聞くよ』
『友達だもん』
『それに、帰りたくないのは、俺もわかるし……』

異界に戻るのは、いやだった。
ひとりぼっちは、寂しかったから。

『でも、俺はずっと友達だから、辛いときは俺が助けてあげるから』

その後、七不思議を試した君。
僕は君の願いを叶えてやれなかった。
角村と同じ願いだったから。

だから。せめて、君の苦しみを。
叶えてあげられない願いを知った。

――

真っ暗な放送室。
一人椅子に腰かけていた。

僕を探す君と、君のお友達。
放送をいれた。

『ずっと、ここにいるのだけれど ジッ……ジジジ……』
『きっと、見ることもできないよ』
『暗いときに、影を見ることはできないもの』

『それにもうすぐ、下校時間。よいこのみんなは、帰りましょう』
『生徒のみなさん、先生、またあした。本日の放送は――ジジジジ』





見つけないで僕を。




君によく似た声が出た。



――




退屈そうに、本を閉じる。

『イステの歌』

ふありとあくび。

思い出すことをやめた。