RECORD

Eno.48 Siana Lanusの記録

◇41



──苦しくないところから思考していこうか。





神を人が乗り超えると語ったあれのこと。


まず、過ぎた破壊は害だ。
では革命が“過ぎた”破壊にならないためには何が必要か?
展望だ。破壊を起こした先の、具体的な展望だ。理想像と言い換えても良いだろう。
社会や周囲にどのような影響を及ぼすかを、考えること。
どのような根回しが必要で、どのような介添えが必要か考えること。
常識の破壊は、ひとのためのものでなければならない。
ただ壊して何が起こるか沙汰を待つなど、愚かな行いだ。
破壊によって喪ったものは、戻っては来ない。
だから破壊は慎重に為さねばならない。


次。私は神の存在全般を悪しくは思ってはいない。
かれらは、そんな感情を抱いて良い次元に居ない。
かれらは人類の庇護者であり、喪失してはならないものだ。
かれらの庇護下にあるうちは、確かに、人はかれらの願望以上に育つことは無かろう。
けれどかれらの庇護無しに生きていけるほど人は強くない。
神と密接な神之世を破壊するのは───人にとって代償が重すぎる。
かれらが明確にひとの毒になっている訳では無いのなら、その存在を侵すべきではない。
あいつの言う超えるが、どのような形になるのかにもよるが、
神をひとつも害さずに果たすことは難しい気もする。
そもそも手が届くのかも分から無くはあるが、彼の後援者である神も
共謀しているとなると可能性は無くあるまい。


あの男は何故それを破壊せねばと思ったのだろうか。
平穏は停滞を招く、人の成長を阻害する。
だが柱を壊せば家は崩れ、人もろとも潰れて死ぬ。


彼らの世は決して、停滞していると思えない。
神に愛され、神を愛し、異郷を刺激として受け入れる。
争いが無ければ停滞している──ようには確かに見えるだろう。
ただ平和な時間が育むものも多い。成長と言い替えて間違いない。

───何百年も見てきた中で、その成長が頭打ちになったように見えたのか?
───否。彼らが契ったのは不死者になった──何百年前の事。

では何故、彼は破壊せねばと思ったのか。
思考のルーツから知らねば、大きな掛け違いを見逃そう。