RECORD

Eno.8 スフェーンの記録

EP18.5

「……………」



自室で独りごつ。
男は頭を抱えていたけれど。


「………………」



勘違い男じゃなかったのかよォ…………



めちゃくちゃ好かれてるな?
なんて、そう思うことあれど、まあ揶揄い対象として。
面白いからだと思ってたんだけどな。
時折距離が近いのも、まあそれがきみの距離感ということで。
好きな色がそちらの方か。思うことはあれど。
まあ自分に矢印飛ぶわけないからさ。
盛大な勘違い男になってはいけない。きみとは仲良くいたいわけだし。


「……」



耳に手が言った。
載せられた唇のことを思い出している。
マーキングをされている。
それほどに気に入られていて。


俺が、いい




………俺が………



これは役を被っている。
これは厄を被っている。

それでも、他ではなく自分がいいと、それを言われるのは初めてで──



──いやまだ待てよ真似事だって言っていただろ。
庇護なんだかそっちなんだかわからないって言ってたから。
とかく、矢印が向いていることだけ考えればいい。
変に捉えてはいけない。それこそよくないわけだし。




「………」





板挟みになっている。
板挟みになっている。

やることはやらなくてもいいことで、けれどもやらなければ気が済まないことだ。
だから帰る。
それだけが強い輝きを持っていて。
それでいて、八つ当たりにしか過ぎないことだった。

ああでもな。何かあったらきみはすっとんでくるんだろう。
攫うために。自分の方へ。
難しくとも世界を超えて。

きみに嫌な思いをさせたくないなあ。




「……」




くっそなんで俺なんだよ




可愛い子もきみのこと真剣に好きになってくれる子も多くいるだろうに!
真っ当に正直に。
対等にきみと向き合う人なんて、長く生きるならこれから先に。

これは真面目で、曖昧でも思ってくれた人の気持ちを裏切れないたちだから。
あとちょっと、他ではなくて自分がいいと言われたのが嬉しくて。
きみのことを考えている。
やらなければいけない託されごとを考えている。

挟まれている。

考えている。考えている。

考えて、答えは出ず。

くちゃくちゃの頭で眠りにつくんだろう。