RECORD

Eno.253 クァリの記録

🜍

「では所有権は放棄、旧公国による犯罪行為への補償の一切も受けない、と」

「如何にも」

「連合国内での武装及び活動の制限は」

「対価は断った筈だ。汝れらに従う義理は――」

「それもういいって、バウラークスィ。面倒になるから普通に喋ってやんなよ」

「――まあ、何と言うか。こっちも仕事なのでな、善処はするが約束はできない」

「とは言え、わが国には法があります。特例に則し制限で留めているのはこちらなりの譲歩だとご理解願いたいですが」

「法は法だ。制限で済まさず厳格に処理するべきだ。態々例外を作るのは……其方のお偉方は、いざとなれば我らを雇えるようにしておきたいのだろうよ」

「……そんなことは」

「年寄りの世迷言だ、何も言わなくて良い。女史殿の立場も解っている」






「時に貴公ら、我らを"シュラウド骸布"と呼んでいたか」

「はい、各地の伝聞で一番多かった呼び名です。他にもありますよ、"シンデレラ灰被り"とか」

「ふっ……ははは。それは良いな、面白い」

「っすよねえ。そちらが望むんであれば呼称も統一させます。資料に書く正式な名前が必要なんで」

「なれば"エル・クァリゥ"と。"灰の森人"を意味する言葉だ」







「本当に、それで良いのですか。あなた達は」

「蛮行を許したわけではない……だが我らも傲慢だった。森も我らを許していない。侵略者は皆死に、物語は終わった。女史殿、貴女には何の責任もないし、償えもしないのだよ」

「私個人ではなく、わが国が――」

「ほう?先人の尻拭いをせずに済んだのだ、国の者は喜ぶと思うがな。女史殿のすべきは、この旨を国に持ち帰ることだろう。納得を追求することではない」

「…………ひとつだけ、個人的な質問をしてもよろしいでしょうか」

「構わない。時間はいくらでもある」

「"クァリ"という名に、心当たりはありませんか」

灰耳長達がざわついた。

「鎮まれ。……偶然ではないな。どこでそれを?」