RECORD

Eno.273 玉守 蜜喰の記録

挫折と喪失

玉守家の人間になってから、私は努力した。
だけど、どうしても私は才能がなかった。
そして闘うにも体力がなかった。

人間になるための過程で一度死にかけた私は心臓を傷つけたせいか、激しい運動に身体がついていけなくなってしまった。
長時間の戦闘に身体が耐えられない。

それでも私は諦めたくなかった。
戦わなくてもいいって友達は言ってくれたけど。
私が何もできない自分が嫌だから。
私が私に自信がなくて、友達に何も言えないのが嫌だから。

ある日、訓練を続ける私の前に男の人が現れた。

「あなたが噂の人間になった半妖ですか。
……生まれついて人ならざるものだというなら、人間になるというのはいささかおかしな表現ですが」



呆気に取られたけれど、彼は私に稽古をつけてくれるのだと言った。どうやら玉守家の出身で、普段は旅をしているけれど時折戻ってくるのだとか。

……結果的にいえば、私は彼に見放されてしまった。
度重なる訓練と問答の果てに、私は武器の錫杖を叩き折られ立ち上がるのもできない傷を負わされた。

「あなたに錫杖を握る資格はない。
それは人を守るための術も扱えない半端者が、敵を倒す力もない半端者が、気安く手に取るものではない」





……私が強くなりたいと思うのは、間違ってるのかしら。強くなりたいと願わなければ、この妖刀を手に取ることもなかったのだから、そうなのかもしれない。
だけど、それなら私はどうすればよかったのだろう。

私は何もできない私が嫌いだ。
弱くて、だからいつもみんなに引け目を感じている自分が。
でも、それを友達に知られるのも嫌だ。

妖刀のことを黙ってこの世界に来たのもそれが理由だった。