RECORD

Eno.314 闘技者の記録

もともとはそういうために伸ばされっぱなしだったみたい。
でも、手入れすると長くて柔らかくてふわふわしてて、好きだった。

ときどき木の手入れで髪に花や葉っぱが引っ掛かっていた時もあったり、寝起きでぼさっと広がっていたりした時もあってそれも好きだった。

「あなたが好きと言うから、切らないだけです。」と言っていたけど、本当はどうだったんだろう。

私は、力に負けて絶望した。
私は、力に負けて好きだった物ですら、自分の手で切り離してしまったの。

あの時もらった彼の鋏で髪を切った音を今でも覚えている。
私の心もずたずたにした音。
あの時切った髪の感触を今でも覚えている。
ずっと閉じ込めてしまったことで初めて触れた時と同じごわついた感触。

守りたいと思っていた物を守れなかったとわかった時だったんだ。