RECORD

Eno.273 玉守 蜜喰の記録

私の物語

ここに来てからずいぶん楽な気がする。
仲の良い人がここには誰もいないからなのだと思う。

私はどうしても人に気を遣ってしまう。
いつも笑顔で人に好かれるような振る舞いを。
そう教わっていたし、もはやこれは染みついた習慣だ。

だけど私が無理してることが、仲良くなるとわかってしまう。
理解されてしまう。
それは困るのだ。相手に申し訳ない。

だから仲の良い友達が今私のそばにいないことに少し寂しさはあれど、安堵している。

「幸せになってほしい」という言葉について、考えていた。
きっと、私が時折無理をしていることをわかっているからこそみんなはそう思うのだろうと。

それなら、みんなとは遠く離れた……たとえばこの世界で余生を過ごすのも悪くないんじゃないかと思う。
みんなとは会えなくなるけど、それでも私が不幸なわけではないことは理解してもらえるだろうし。
なんとか手紙くらいは送れるんじゃないかしら。


私はもう『人間になる』という夢を叶えた身だし、やりたいことも特にないし。
妖としての性質を失った時、あとどれだけ生きることができるのかはわからないと言われた。
残りの人生をどう過ごすかずっと考えていたけど、やりたいこともないというならここで観客を楽しませるための戦いを続けるのも悪くない。
この世界には私の事情を知る友達もいないから心配もされないし。

誰かの特別になるのを諦めたら案外人生楽なものだと思う。
誰かの目に留まることもない引き立て役としての人生。
そんな物語の結末でいいんじゃない?