RECORD
Eno.276 リベレの記録
一本槍の蜻蛉
剣を、槍を、斧を、
鈍器を、鞭を、拳を、盾を、杖を、──。
この円形闘技場の中で、武器と呼ばれ扱われる何もかもに。
その使い手たちに、槍ひとつで挑んでいた、
蜻蛉に憧れるただひとりの、人間。


相手を見据える。敬意を込めて。
試合開始の合図と共に口にするのは、いつも通りの。
この礼儀がどこまで通用するのか、
その最初のゴールラインが、目の前にある。
大上段からの振り下ろしに、対応できたのは僥倖であった。
低く構え、リーチを生かしての斬りつけ。
先んじて一本を奪う。
そのまま振り上げようとして、空いた足元に武器が叩きつけられた。
本物の戦士の本気の攻撃。一撃一撃が、重い。
軽い槍では防御も取れず、この傷は恐怖を植え付けた。
(──それでも)
踏み込む。
特大の一撃に食いつくように、柄と柄をかち合わせ、はじき返した。
(僕の、はじめてできた夢のために)
武器を構え直す隙を狙って、大振りの一撃で畳み掛ける。
防御など、考えて勝てる相手ではない!
(何度だって挑んで、勝つ!)
まっすぐ貫こうとする一閃は、横からの振り回しと同時に命中した。
衝撃で軽い身体は跳ね返され、膝をつく。
5ラウンドの後に、その結果は告げられた。
槍を支えに立ち上がり、現実感がないな、と受け止めてはいても。
後からこみ上げるものに、ぐいと顔を拭う。

架空から来たかもしれなかったその刃は、
今確かに現実のものとして、届いた。
──ひとつ、証明は果たされた。
鈍器を、鞭を、拳を、盾を、杖を、──。
この円形闘技場の中で、武器と呼ばれ扱われる何もかもに。
その使い手たちに、槍ひとつで挑んでいた、
蜻蛉に憧れるただひとりの、人間。
「あなたが、最後の──」
「僕の挑戦を、見届けていただけますか」
相手を見据える。敬意を込めて。
試合開始の合図と共に口にするのは、いつも通りの。
この礼儀がどこまで通用するのか、
その最初のゴールラインが、目の前にある。
大上段からの振り下ろしに、対応できたのは僥倖であった。
低く構え、リーチを生かしての斬りつけ。
先んじて一本を奪う。
そのまま振り上げようとして、空いた足元に武器が叩きつけられた。
本物の戦士の本気の攻撃。一撃一撃が、重い。
軽い槍では防御も取れず、この傷は恐怖を植え付けた。
(──それでも)
踏み込む。
特大の一撃に食いつくように、柄と柄をかち合わせ、はじき返した。
(僕の、はじめてできた夢のために)
武器を構え直す隙を狙って、大振りの一撃で畳み掛ける。
防御など、考えて勝てる相手ではない!
(何度だって挑んで、勝つ!)
まっすぐ貫こうとする一閃は、横からの振り回しと同時に命中した。
衝撃で軽い身体は跳ね返され、膝をつく。
5ラウンドの後に、その結果は告げられた。
槍を支えに立ち上がり、現実感がないな、と受け止めてはいても。
後からこみ上げるものに、ぐいと顔を拭う。

架空から来たかもしれなかったその刃は、
今確かに現実のものとして、届いた。
──ひとつ、証明は果たされた。