RECORD
point:レピドライト/EP19.5

◆レピドライト
派手な髪色の割、挙動不審さと自信のなさが姿勢と目の泳ぎ具合から伝わる、暗い女。
メガネと常の下がり眉がトレードマーク。近視らしい。
挙動の通りいつも自信がなくて落ち込みがちなネガティブレディ。実際とても不運な方。
一度キレると手がつけられなくなるらしい。カフェラテが好き。
彼女の不運を並べたら彼女の人生そのものを語ることになってしまうだろう。
それほどに人生にツイていたことなどはない。
彼女の姿勢の悪さと後ろ向きな性格はその人生の中で形成されたものである。
呪われているなどもなく、天性のもの。作中にはマザーの元に相談をしに行く回もあったが、その後も改善はされないと言うオチであった。
そのため、さまざまな場所で噂話を立てられることがあり孤独感を感じている中であの喫茶店へと辿り着いた。
その仲間たちは快く接してくれるため、レピドライトにとっての居場所になり、そして初めてできた仲間となった。
──そのために、今日も彼女は音を纏う。君たちの欲望がかなうように。
◆psi:響かせるための音響
歌うことでその場に風を生み出すpsi。
というよりは空間の空気を揺らすのほうが正しいかもしれない。
ただ叫ぶだけでもその場の空気を振るわせ、気絶させることが可能であるが、そこに音階を加えることで空気の振動から風を生み出すことができる。
ドレミの三音歌えば三つの弱い風。
ラシドの三音歌えば三つの強い風。
うまくやればかまいたちのような風の刃を生み出すことも可能だが、レピドライトの自信のなさが故に歌っても声がうまく出ていない。故、弱々しい風しか生み出されていないと言う。
「ドジっ子は好きですか?よろしい、私も大好きです」
「あ???不幸娘とドジっ子は違うやろがい」
「いつもべそべそ泣いてばっかりだけど、仲間のことが大好きなのが可愛いですよね」
「ラテアート作る回すき ギャグ回として至高のでき」
「最終回のあの展開がいいですよね、弱気のあの子がめちゃくちゃにキレるっていう」
──以上、街中の声。
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「………」
「…….ほっとくとありゃかなり心配だな、あのこはよ」
ちょっとね、ちょっと。
献身的すぎるんだ。
あんまりにも優しすぎるんだ。
そうして自分だけが傷ついて、あとは何も知らなくても、自分だけ笑っていればそれで終わり、それでいいって。
いいわけないだろそんなの。
いいわけない。いいわけない。
すごく静かに怒っていた。彼女には見せないようにして。
迷惑をひどく嫌うみたいだから。
契約のことを思い出していた。契約するときにすることを思い出していた。
淡い夢を持って、それで人と仲良くして、人と寄り添おうとしているあの子が、今まで傷つきながら、いろんなことを自分1人で我慢してきたんだろうと考えた。
その優しさに漬け込んだその性根が心底気に食わない。
彼女の優しさを弱みととって、絡め取ってわざわざ選んで食ったその性格が、ひたすら気に食わなかった。
怒っていた。
静かに。
自分のことなんかを、好きかもしれないと思ってくれた子が傷ついてるのが一番嫌だ。
心底嫌だ。
怖がっていた顔が辛かった。
自分のことなんかを好きでいてくれる人たちが傷つくのはいつだって辛い。
とても苦しくなる。とても悲しくなる。
それに対して、いつも何も力を持たないから解決してあげられない自分が嫌だ。
ただただ、話し相手になることしか。
そうやって相槌を打っている時、自分ってすごく薄っぺらで力も何にもない人間だと心底思う。
問題というのは解決するために存在するものであり。
話を聞くことで解決する問題と、そうでないものがある。
多分、これはそうではない。
「………….くそ」
……
正直、一回で終わるのだろうか、と、思っている。
あの言い方だと、何度か起こることの犠牲となることを良しとしているような気がして。
けど、それを止めるだけの力が自分には、多分、ない。
あることには、あった。でもこれを使うのはちょっと怖いから。
自分はどうなってもいい。これを使った後のことを考えると、異世界で使用するのはちょっと、怖い。
だから、力のない人間だった。ただの。
ただの、俳優だった。
指を咥えて見ているしかない。
どこまでもヒーローではない。負けるための役被り。
「………」
──抱きしめてあげられたらよかったんだけどさ。
それはすごく多分、安心させる行為かもしれなくて、不安をかき消す行為かもしれなくて、そうするべきではないと思ってしまった。
無責任に好意を振り撒くな。
無責任に好意を振り撒くな。
自分は帰らなければいけなくて、いくらなにかあったからって、あの子がすっ飛んでくるのかもしれない。が、別れるのは確か。
自戒するように自分の頭に響かせてんだけど。
『…………」
「…………』
頭を抱え込んで、かいている。
そのつもりはなかったが、もう遅い気がするし。
困り事がある人をほっとけない性分だし。
自分って心底バカだ。
だから、今は静かに祈るしかなかった。
祈りなんて嫌いだ。祈ったところで何も変わらないから。
しかし、そうするしかなかったから、奥歯を噛みながら瞼を下ろしている。
眼帯の奥の目が燃えるように熱い。
どうか今後、あの子に何事もありませんように。