RECORD

Eno.23 透の記録

今日、透明色の『 』


嫌いなものはありますか、と問われれば。答えは曖昧。
好きなものはありますか、と問われれば。答えはもっともっと曖昧。

嫌な事はありますか、と問われれば。今なら、苦しくなって死ぬのは嫌だ、と答えよう。

苦しくなって死ぬのはもう嫌だ。
何度も何度もそうして死んだ記憶断片だけがここにある。
それが不意にフラッシュバックして、身動きが出来なくなる。
苦しいな、という思いだけで。防ぐ術を思い付けなくなる。

でも、防げなかったよね。
嫌だって言っても、辞めてはもらえなかったよね。
助けてって言ったら、じゃあ助けてくれたのかな。

違うよね。違うよ。

壁に貼られたメモを剥いだ。どんな言葉も己を助けてはくれないと良く分かったから。
ポケットの手紙は、最早所在すら分からない。それを見る事はきっともう、無い。

誰も助けてくれないんだって良く分かった。
誰も優しくなんて出来ないんだって良く分かった。
誰も真実の言葉なんて持っていないって良く分かった。


机の上でキラキラしている、あのゴミ山の事だけ見ていた。
話しかけていた魔女の事も、手を引く詩人の事も。昨日に置いて別の今日を歩んでいた。

だって、

誰かがいると、俺はいつも嫌な目に会うんだもの。

誰かはいつも、俺に嫌な事を運んでくるんだもの。

俺が何をどう、頑張って。善意を持っていたって。悪意って言われて。間違ってるって言われて。

そんなんで、そんなんで。俺、

もう何をどうしたいとも、思えない。

人の心も。ものも。何も。
もう受け取りたくないから、流れていく。


毎日昨日に蓋をする。