RECORD

Eno.105 《5i.残酷》の記録

おとぎばなし いち

ある国に、それはとても可愛らしい女の子がいました。
女の子は親の愛を受けて、優しさを受けて、それに応えるように、優しく、愛情深く、綺麗に育っていきました。


女の子は、お母さんと暮らしていました。
お父さんはいません。女の子が言葉を話せるようになる前には、もう、亡くなってしまっていたので。
お父さんがもっていたお城や、土地や、そこに暮らす人たちは、お父さんがいなくなってしまったことで、ずっと悩んでいました。

お母さんもずっと悩んで、色んな人とお話ししたり、怒られたりしていましたが…
女の子はまだ、何をしてるのかなんて何もわからなくて。
お母さんも、女の子の前では優しく、明るいお母さんでいたので、ずっと幸せでした。



ある日、女の子はお母さんとお話をしている、とても背が高くて黒いお面をつけた大人の方に会いました。

『こんにちは、××××
 聞いてた通り、とても可愛らしいお嬢さんだね』


大人の方は、とても優しい声でそう言って。
女の子のためにしゃがみ込んで、女の子を1人のレディとして扱うように、手をとってくれました。


女の子は、その時初めて自分が子供じゃなく扱ってくれたように思えて。
とっても、嬉しくなりました。


『私は前の領主…君のお父さんのご友人でね。 
 君のお母さんとも仲が良いんだ。

 お母さんの悩みを聞いてあげててね。これから、力になる予定さ。

 だからきっと、これからはよく、こちらに来るだろうね。

 もし見かけたら、いつでも、声をかけておくれ。
 困ったことがあったり、嬉しいことがあったら、お話ししてほしいな』


クッキーとお茶を、ご馳走してもらって。
そんな風に、大人の人とお話ししたのは初めてだったので。
そんな風に、大人の人が対等なように接してくれるのは初めてだったので。

女の子はとても偉くなった気持ちになって、大人の人が、とても好きになりました。



それから、何度も何度も、大人の人は女の子の下にやってきて。
お母さんとのお話の途中でも、見かけたら手を振ってくれて。

こっそり会いにきて、可愛い真っ赤なお花や、お菓子をプレゼントしてくれて。
泣いていたら、みんなに言えないような困った事も、怒らずに聞いてくれて。

花瓶を割ってしまったことも、転んで擦りむいてしまったことも、美容師が女の子の髪の毛を短く切りすぎてしまったことも、みんながいつもぷんぷんしていて怖いことも。

全部、ちゃんと聞いてくれる大人の人が、どんどん好きになっていきました。


ずっとずっと、女の子は幸せでした。








嘘です。本当はずっとではありませんでした。