RECORD

Eno.212 フィオルライレの記録

【人の頁】深淵であり、希望

光が太陽から注ぐものならば
太陽は主であり、天使はその光だ
光は万物を照らし、人々に寵愛をもたらし
パンのための小麦畑と、酒のための葡萄畑を育む。
けれど時にそれは、地に立つ者の影を明瞭にし、暗く色濃い深淵を生む。
その深淵こそが、主の与える試練である。



金属の装丁が施された、分厚く重々しいバイブル。
訓練場のダミー相手に闘技者の真似をして何度か打ち付けてみたりしてもまるで傷まない頑丈さ。
当然これで人を殴る度胸はないのだけれど。
そんな本を1日読んだり振るったり持ち歩いていたらすっかり筋肉痛になっていた。

天使がもたらす影とは何なのか
今ならわかる。その影は自分の形をしている。
敵対者とは、自分なのかもしれない。
光に近づいた事で影は色濃くなり、僕はそれに気付いたんだ。

その影を克服するのに手を取り合うのはきっと天使ではない。
対等に触れ合える者、まだ出会っていない誰かなんだ。
天使は照らすだけ。
そばにいて、己の影を知れと教えてくれるだけ。
天使とは絶対に対等な絆にはなれない。

その事実が何よりの、僕にとっての深淵であり、希望だ。
悩める夜を繰り返した先がしあわせでありますように。