RECORD
Eno.263 ユビアサグラーダの記録
みちづれるゆめ
*
「─────これにて、汝を騎士に任ずる。これよりは第五王子、バルドレド・ファールベリト殿下に仕え、その命を全うせよ」
…………
「…略式ではあるが、これにて貴様は一端の騎士よ。全く、お上も青田買い甚だしい…平静の折にその実力ならあと3年は見習いであったところであろうに…」
…………
「…なんじゃその顔は。近衛騎士は貴様の夢であったじゃろうて………いや、よしてやろう。叙任にすら来ん主君など、裏切り者の謗りは免れなかろうて…」
………………
「…いくら血を重ね、業を重ね、屍を重ねようと……所詮我らは基人の次よな。しかし我らはそうやって、紛い物といえ位を得ておる…これよりその命、一兵卒の下と心得よ」
……………………………………
「…………68番。支柱の扱いは慣れたか」
「返さずとも良い…軟弱といえ、ここまで辿り着いた以上は相応に己のものと出来たことじゃろうて……
…幻術師の禁忌は覚えておろうな」
…………
「…………幻に頼りすぎるな。あくまでも手のひとつと捉えよ。
我らは所詮脳の虜、幻に夢を重ね、手遅れになれば夢心地よ。限界すら忘れ、ある日突然現を忘れる……」
………………………………
「…………夢を恐れよ、68番。恐れは、貴様の枷となる。
…現より目を逸らすことのないよう努めるがいい。いずれ全てが、泡沫に消える迄」
*
「…………おお、そこにおるか、68番。貴様が儂相手にこうしておるとは…やはり残党、まともな兵は残らんかったな」
「潮時じゃろうて……主を潰され、なおも足掻くは見苦しいと言うておったつもりが、流れに流れてこのザマよ……は、近衛騎士の長が、なんとまあ馬鹿馬鹿しい…」
「……時に、よりにもよって最後に貴様が残るか…剪定を済ませたひ弱な梢、早々に枯れ落ちるとばかり……カッカッカ、最早因果も繋ぎはできん!なんとも皮肉じゃろうが、ええ?」
「……暗いな。この暗闇は久々よ……何、恐ろしくは無い。ただ愉快がっておるだけじゃて…ずっと支柱にもたれ掛かり、夢を見ておったのは、紛れもない自分であるのに、貴様には大仰な口を叩いたものだと」
「……第二より第四王子。有力貴族。教会の者ども。騎士。兵士。我々同胞……随分減ったものだ。空いた席に誰が座るか、見れぬ事だけが心残りよ」
「…なあ、68番。儂らは、他に何ができたであろうなあ。忌まわしき聖痕がなければ、騎士団の仕組みがなければ、神の教えが我々にもう少しでも親切であったなら…………全て、詮無き妄想であるが…」
「……それを夢というのだろうな。」
「…68番、恐らく、次が最期よ。あと1人。貴様が殺すべきは、あと1人」
「……近衛騎士団長、ゲルドバッハの名において命ずる。理想の果て、夢の残滓まで、しかと見届けよ。我ら80名、その両腕にて連れてゆけ」
「…………さらばだ、夢見る梢」
────────────────────────
2番、夜蓋のゲルドバッハ。
新王の戴冠式直前、第二王子派の残党と共に襲撃。
大規模な暗幕の幻術により周囲の兵との連携を崩され、一時大聖堂前まで陣を押される。一時は式典の取りやめも検討されたが、新王勢力はこれを逃せぬ機とし、完遂までの時間稼ぎを最優先として命が下る。
約5時間、自陣の幻術師、宮廷術士をすり潰しながらの防衛戦が続いた後、即位後の聖痕による大号令により敵騎士の幻術の解除に成功。負荷により身体能力の落ちた当該騎士を暗器を用いて襲撃。その後まもなく死亡を確認。
国王軍350名が死傷。幻術師、宮廷術士が合わせて68名負荷限界。
以降は引き続き護衛として、
…
侵入者を確認。排除に向かう。
「─────これにて、汝を騎士に任ずる。これよりは第五王子、バルドレド・ファールベリト殿下に仕え、その命を全うせよ」
…………
「…略式ではあるが、これにて貴様は一端の騎士よ。全く、お上も青田買い甚だしい…平静の折にその実力ならあと3年は見習いであったところであろうに…」
…………
「…なんじゃその顔は。近衛騎士は貴様の夢であったじゃろうて………いや、よしてやろう。叙任にすら来ん主君など、裏切り者の謗りは免れなかろうて…」
………………
「…いくら血を重ね、業を重ね、屍を重ねようと……所詮我らは基人の次よな。しかし我らはそうやって、紛い物といえ位を得ておる…これよりその命、一兵卒の下と心得よ」
……………………………………
「…………68番。支柱の扱いは慣れたか」
「返さずとも良い…軟弱といえ、ここまで辿り着いた以上は相応に己のものと出来たことじゃろうて……
…幻術師の禁忌は覚えておろうな」
…………
「…………幻に頼りすぎるな。あくまでも手のひとつと捉えよ。
我らは所詮脳の虜、幻に夢を重ね、手遅れになれば夢心地よ。限界すら忘れ、ある日突然現を忘れる……」
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「…………夢を恐れよ、68番。恐れは、貴様の枷となる。
…現より目を逸らすことのないよう努めるがいい。いずれ全てが、泡沫に消える迄」
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「…………おお、そこにおるか、68番。貴様が儂相手にこうしておるとは…やはり残党、まともな兵は残らんかったな」
「潮時じゃろうて……主を潰され、なおも足掻くは見苦しいと言うておったつもりが、流れに流れてこのザマよ……は、近衛騎士の長が、なんとまあ馬鹿馬鹿しい…」
「……時に、よりにもよって最後に貴様が残るか…剪定を済ませたひ弱な梢、早々に枯れ落ちるとばかり……カッカッカ、最早因果も繋ぎはできん!なんとも皮肉じゃろうが、ええ?」
「……暗いな。この暗闇は久々よ……何、恐ろしくは無い。ただ愉快がっておるだけじゃて…ずっと支柱にもたれ掛かり、夢を見ておったのは、紛れもない自分であるのに、貴様には大仰な口を叩いたものだと」
「……第二より第四王子。有力貴族。教会の者ども。騎士。兵士。我々同胞……随分減ったものだ。空いた席に誰が座るか、見れぬ事だけが心残りよ」
「…なあ、68番。儂らは、他に何ができたであろうなあ。忌まわしき聖痕がなければ、騎士団の仕組みがなければ、神の教えが我々にもう少しでも親切であったなら…………全て、詮無き妄想であるが…」
「……それを夢というのだろうな。」
「…68番、恐らく、次が最期よ。あと1人。貴様が殺すべきは、あと1人」
「……近衛騎士団長、ゲルドバッハの名において命ずる。理想の果て、夢の残滓まで、しかと見届けよ。我ら80名、その両腕にて連れてゆけ」
「…………さらばだ、夢見る梢」
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2番、夜蓋のゲルドバッハ。
新王の戴冠式直前、第二王子派の残党と共に襲撃。
大規模な暗幕の幻術により周囲の兵との連携を崩され、一時大聖堂前まで陣を押される。一時は式典の取りやめも検討されたが、新王勢力はこれを逃せぬ機とし、完遂までの時間稼ぎを最優先として命が下る。
約5時間、自陣の幻術師、宮廷術士をすり潰しながらの防衛戦が続いた後、即位後の聖痕による大号令により敵騎士の幻術の解除に成功。負荷により身体能力の落ちた当該騎士を暗器を用いて襲撃。その後まもなく死亡を確認。
国王軍350名が死傷。幻術師、宮廷術士が合わせて68名負荷限界。
以降は引き続き護衛として、
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侵入者を確認。排除に向かう。